レイの行きたかった場所


 その日はレイと一緒に獣人族の国で色々な場所を巡り、めいいっぱい遊び尽くした。そしてすっかり夕方になってくると、レイがある場所へ行きたいとお願いしてきた。


「主、実は最後に……ワシが寄りたい場所があるんじゃが。」


「そんな場所があるなら、遠慮せず言えばよかったのに。」


「いや、今の時間でなければ駄目なのじゃ。今でなければ意味が無いのじゃ。」


「そっか、それじゃあ行こう。」


「感謝するのじゃ!!」


 すると、レイはいきなり人化を解除して、元のクリスタルドラゴンの姿へと戻ると、俺のことを持ち上げて背中へと乗せてくれた。


「少し遠い故、こちらの姿で飛んで参るのじゃ。」


「ふ、振り落とさないでくれよ!?」


「むははは、安心するのじゃ。ゆっくり参るからの。」


 レイの背中に乗って、茜色に染まっていく周りの景色を楽しみながら、彼女の行きたい場所へと飛んでいく。


「ちなみに、今から行く場所ってどんなところなんだ?」


「それは着いてからのお楽しみじゃ〜。もう少しで着くからの。」


 それから少し飛行すると、レイは徐々に高度を下げていく。そしてゴツゴツとした岩肌の地面に着陸する。


「主、着いたのじゃ。」


 レイの背中から降りると、彼女は人化して俺の手を取ってきた。


「さ、こっちじゃ。」


 彼女に手を引かれて歩いていくと……目の前に巨大な水晶が何本も地面から生えている洞窟が現れた。


「これは凄いな。」


「ここは、ワシがこの世に産まれ落ちた場所なのじゃ。ここに生えている水晶は、ワシが産まれる時に生じた力によって生えたもの。」


「そうだったのか。」


「ちなみに、ただワシの産まれた場所というだけで、主を連れてきたわけではないぞ?もっと奥……それこそワシが産まれた中心地に招待したいのじゃ。」


 さらに奥へと進むと、どんどん周りに生えている水晶の形が変わり、まるで花のような形の水晶が至るところに生えていた。


「水晶がこんな形になるなんて、まるで花畑みたいだ。」


「これもワシが産まれた時の強い力に当てられてこうなったのじゃ。」


 そして花のような形の水晶がどんどん道を埋め尽くしていき、足場もないぐらいまで奥に進んでくると、目先に少し広い空間が広がっていた。


「あそこがワシの産まれた場所じゃ。」


 レイの指さした場所には、一面に茜色の水晶の花が咲いていて、とても幻想的な光景が広がっていた。


「本来自分の生まれた場所など、見せるものではないが……ここは夕暮れになるとワシが突き破った天井から日差しが差し込んで、水晶が赤く染まりとても綺麗なのじゃ。ここを主に一度見せたかった。」


 水晶の花畑が茜色に輝いている光景をしばらく、レイとともに眺めていた。


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