魔法陣から現れたのは…


 魔法陣が突然現れたかと思えば、そこから現れたのはレイだった。


「いよっと!!」


「レイ?どうしてここに?」


「何やらとんでもない魔力を主のいる場所で感じた故、飛んで参った次第じゃ。」


「そういうことね。」


「ところで、この黒焦げになっているのは……もしやボルトドラゴンかの?」


 レイは黒焦げになっているボルトドラゴンを、容赦なく足でゲシゲシと蹴りながら問いかけてくる。


「あぁ、そうだ。なんかわざわざ俺のことを探して、襲ってきたみたいだよ。」


「おぉ〜、それはそれは大層無駄な努力をしたものじゃな。そんな手間をかけたにも関わらず、簡単に返り討ちにされてしまったと……まったく愚かな奴じゃな。」


 そう吐き捨てるようにレイは言った。


「ま、命があるだけ儲けものかの。慈悲深い主に感謝するのじゃな。それで主よ、こやつの処遇はどうするつもりじゃ?」


「いや、今それを考えてたんだ。なんかこいつ、前に龍集会で話題に上がった魔物を食べて、大きく力を増したみたいなんだ。」


「あの凶暴な魔物をか。主の手料理を知ってしまったワシからすれば、どうして料理されていない魔物なんて不味いものを食えるのか不思議でならんな。いくら力が増すとはいえ、不味いものは食いたくないな。」


「まぁ、それはレイの舌が肥えてしまった証拠だな。」


 ランもレイも、果てにはグレイスも俺と一緒に旅をする前までは魔物を食べて生活していたのに、今ではそんな物はもう口には出来ないと口々に言っている。


「さて、本当にこいつはどうしようか。」


「いっそのこと……料理して?」


 そうレイがポツリと呟くと、黒焦げのボルトドラゴンが体をビクリと震わせた。


「いや、それはやめとこう。美味しくなさそうだ。」


「確かに、黒焦げじゃしな。」


 ツンツンとレイは黒焦げのボルトドラゴンを指先でつつく。


「それならやっぱり獣人族の国の研究機関に運ぶしかないな。だけど一つ問題があるんだよなぁ。」


「超再生のことかの?」


「あぁ。」


「それならばスキルを封印してしまえばよかろう。ワシに任せるのじゃ。」


 そう言ってレイはボルトドラゴンの体に触れた。すると、ボルトドラゴンの体に鎖のような模様が描かれていく。


「ほい、これで完了じゃ。超再生のスキルだけ封印しておいた。」


「マジか、助かるよ。」


「では、早速参ろうか。獣人族の国で良いのじゃな?」


「あぁ、王都まで頼む。」


「うむ!!承ったのじゃ!!」


 パン!!とレイが両手を合わせると、俺たちの足元に巨大な魔法陣が広がった。

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