残酷な現実
「社長っ!!無事か!?」
「大丈夫ですよ。それより、何か見つかりました?」
くるりとカリンの方を振り返ると、彼女はおにぎりを頬張っている少年を見て、ポカンとした表情を浮かべていた。
「……此方がいなくなった間に何があったのだ?」
「ちょっと話をしただけですよ。」
「ふむ、まぁ落ち着いたのならば何よりだった。」
カリンは俺の隣に座ると、おにぎりを頬張っていた少年の目をじっと覗き込みながら、あることを問いかけた。
「少年よ、確認しておきたいことがある。お前は人間の国から、ナルダという男に連れてこられたのだな?」
「んぐ、ごくっ……ぷはぁっ。そうだよ、お母さんに会わせてくれるっておじさんが言ったんだ。」
「そうか。」
少年に同情の視線を向けながら、カリンは俺にある資料を手渡してきた。それに目を通してみると……。
「っ、これは……。」
「目にするのも酷なほど、残酷なことが行われているだろう。」
「はい。」
この実験記録には、この少年に行われた非道の実験結果が記載されていた。
「それに書いてあるものとは別に、この少年を元の姿に戻す方法を、何とか資料を読み漁って調べてみたが……。」
言葉の途中でカリンは俯いた。
その仕草で概ね察しはついたから、それ以上何か質問することはしなかった。
それから少しして、カリンは顔を上げると少年へ言葉をかけた。
「少年よ、今から少し残酷な話をする。覚悟して聞け。」
「え?」
状況が飲み込めない少年は、首を傾げる。
「お前を母親に会わせてやると言った張本人のナルダは……
その言葉を聞いた瞬間、少年は怒りながら立ち上がる。
「そんな訳ないっ!!おじさんは来る、絶対約束を守ってくれる!!」
興奮している少年の手足は、異形へと変わっている。その様子にカリンは一歩も引くことなく、話を続けた。
「少年よ、これを見ろ。」
そう言ってカリンが少年に見せたのは、この少年自身の実験記録。それを見た少年の顔色が変わる。
「なに……これ。嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だッ!!」
少年の感情が高まっていくと同時に、体がどんどん魔物へと変貌していく。
「ウッ……ガアァァァァッ!!」
信じられない事実に正気を失ってしまい、完全に魔物となってしまった少年は、怒り狂いながら暴れ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます