少年の心を掴め!


 俺を囲んだ魔法陣からは炎や氷……水、雷といろんな属性の魔法が同時に放たれた。


(この狭い空間じゃ、全部は避けきれないな。)


 そう判断した俺は、自分の防御力を信じて体を一気に龍化させ、魔法を喰らいながら異形へと変貌した少年へと突っ込んだ。


「ッ!!ソノスガタ……オマエモオジサンニ?」


 俺が龍化して彼に近づくと、少年は俺の姿を見て攻撃の手を止めた。


「君とは違う。俺は自分でドラゴンの力を取り込んだから、こんな風に姿を変えれるんだ。」


「ナラヤッパリテキダ!!」


 そして再び攻撃を仕掛けようとしてきた少年に、俺は制止の声をかける。


「まぁ一回落ち着いて、少し話をしようじゃないか。」


 少年の目の前で敵意がないことを示すため、龍化を解いてどっかりと座る。すると、彼は警戒しながらも少しずつ異形の姿からもとに戻っていく。


「その姿は自分で変えたりできるのか?」


「できる。おじさんはこんな風に、自由に変身できるようになったのは僕が初めてだって。」


「そうか。で、そんなふうになってしまった原因は、何か自分でわかるか?」


「たぶん……これだと思う。」


 そして少年は、犬の餌を入れるような皿に入った、ドロドロの何かを見せてくれた。


「これは?」


「僕のご飯。」


「ご飯!?コレが!?」


「うん。」


「絶対美味しくないだろそれ……。」


「美味しくないけど、食べなきゃ死んじゃうから。」


 あろうことか少年は、それをまた食べてみせようとした。その手を俺は反射的に掴んだ。


「待った。それ食べるぐらいなら……ほら、これあげるよ。」


 俺はマジックバッグの中から、作り置きしていたおにぎりを取り出して、少年へと手渡した。


「これなに?」


「おにぎりっていう軽食だよ。毒なんか入ってないから、安心して食べていい。」


「…………。」


 少し怪しみながらも、少年はおにぎりを受け取ると一口かじった。そして味わうように咀嚼して飲み込むと……。


「お、美味しい。」


「もう少し食べ進めると、中に入ってる具にたどり着くから、思い切り食べてみてくれ。」


 久しぶりのちゃんと味のある食事だったのだろう……。少年はあっという間にツナマヨのおにぎりを平らげてしまった。


「一個で満足か?」


「えっ……。」


「まだたくさんあるぞ。」


「じゃあ、もう少し食べたい。」


「好きなだけ食べるといい。全部食べたって構わないからな。」


 そして少年にまたおにぎりを手渡して、美味しそうに頬張っている姿を眺めていると、大量の資料を抱えたカリンが戻ってきた。


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