フードファイター、ウォータードラゴン


 ウォータードラゴンと話をしていると、彼女が最近人間の国での暮らしに、だいぶ馴染んでいる事がわかった。


 今はその辺の街で定期的に開催されるという大食い大会で、ぶっちぎりで1位を勝ち取り、その賞金で今は生活しているのだという。


「いやぁ〜たくさん食べ物を食べさせてもらえて、お金ももらえるって最高ですよぉ〜。」


 まぁ、普通の人間で彼女の胃袋の容量に敵うやつなんていないだろうから、優勝は余裕だろう。日本でいう大食いファイターという職業に近いな。


「それでまた、なんでも人間さんはお菓子屋さんなんてやってるんですかぁ?」


「成り行きだよ、たまたまエルフに俺の作ったお菓子を食べてもらったら気に入られたってわけ。で、それを売る会社を作ろうって、エルフ達の最長老に持ちかけられたんだ。」


「ほぇぇ〜……すごい経験をしてますねぇ。」


 そんな話をしていると、手の空いたエルフの社員の子が二人分のお菓子を運んできてくれた。


「社長、どうぞ。」


「あぁ、ありがとう。」


「ほわぁぁ、美味しそうですねぇ〜。」


 運ばれてきたマンドラアイスクリームと、どら焼きを見て、ウォータードラゴンは目を輝かせた。


「一応、定番メニューだ。食べてみて……。」


「ごちそうさまでしたぁ〜♪」


 食べてみてくれ……と言う前に、彼女前からマンドラアイスクリームとどら焼きは消えていた。


「あ、味はどうだった?」


「どっちもすご〜い美味しかったですよぉ。特にこっちの冷たい方は、甘さの奥にほろ苦さがあってぇ、何個でも食べれちゃいそうでした!!」


 体をくねらせながら、ウォータードラゴンは食レポする。


「まぁ、口にあったのなら何よりだった。」


「もっと食べたいんですけど、ダメですかぁ?」


「お金を払えば買って良いぞ。ただ、買い占めは勘弁してくれ。他にも食べたいお客さんはたくさんいるからな。」


「わかりましたぁ〜。それじゃあさっき食べたやつを10個ずつとぉ〜、まだ食べてないお菓子を10個ずつくださぁ〜い。」


 今日はこっちの方は大忙しになりそうだな。本当は今日はユリの方を手伝う予定だったが……今日ばかりはこちらを手伝ったほうがよさそうだ。


 大口……いや大食漢の客、ウォータードラゴンの来店により、お店は忙しさを増すのだった。

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