人間を異形へ変える液体


 あの黒い液体を飲んだ男達の姿が、急速に歪に変わっていく。ある者は手足が人間のものではない、まるで悪魔のように変化し、またある者は理性を失い凶悪な牙と爪を備えた四足歩行の獣へと変わってしまった。


「この変化は、アイツに似てる。」


 獣人の国で俺を襲ってきた、あの男に新しく生えていた腕……アレとコイツらの変化はどこか似ているような気がする。

 もしかすると、あの変な液体は死の女神と何か関係があるのか?


 思考を巡らせていると、レイがポツリと言った。


「のぉ主や、こやつらを大人しく捕まえるのは、なかなか骨が折れそうじゃぞ。」


「あぁ、そのようだ。」


「では……良いな?」


「仕方ない。生かせる奴だけ生かそう。」


 直後、奴らは一斉にこちらに襲いかかってくる。


「ドーナ、ラン、相手のことは考えなくて良い。自分の安全を優先して戦ってくれ。」


「了解よ。」


「ったく、どこまでも面倒かけてくれるよ。」


 そして襲いかかってくる異形の者達を、俺達は迎撃していく。普通の人間よりも遥かに強いが…俺やドーナ達の敵ではない。

 完全に理性を失い、本能のままに襲ってくる奴は、一撃で仕留め、理性のあるやつはなるべく殺さないように迅速に処理していく。


「お前で最後だ。」


「チィッ!!シネッ!!」


 振り下ろされる異形の手を絡め取り、へし折りながら背負って投げ、頭から垂直に地面に叩きつけた。

 普通の人間ならこれで、死んでしまうが……コイツは首の骨が折れても死ねないらしい。ある意味生き地獄だな。


 制圧を終えると、こちらへ兵士の一団が走ってくる。


「だ、大丈夫でありますか!?」


「問題ない。こいつらは危ないから、俺達が王都に連れてくよ。レイ、頼んだ。」


「任された!!」


 ポンポン!!とレイが手を叩くと、巨大な魔法陣が足元に展開され、眩い光を発した。その光が収まると、俺達はさっき倒した奴らとともに、王都にある城の目の前に移動してきていた。


「うむ!!今回はバッチリ成功じゃ。」


 レイが胸を張っていると、俺達を発見した見回りの兵士達が集まってきた。彼らに事情を話すと、すぐにエートリヒのことを呼びに行ってくれた。


 そして急いで走ってきたエートリヒと合流し、事情を話すと……。


「事情はわかった。兎にも角にも、早急な事態の収束に協力してくれて感謝する。明日、大臣達を集めて緊急で会議を開こう。貴公も来てくれると助かるよ。」


 そう言われてしまっては、参加しないわけにはいかない。彼の頼みで俺も明日の大臣達が集まる会議に参加することになってしまったのだった。


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