真の黒幕は誰か


 捕まえたリーダーの男の尋問は、心が読めるメリッサのハチがいるおかげで、驚くほど楽に進んだ。


 そして、得られた情報を元に女性達の監禁場所へと赴くと、そこには多少の衰弱は見られるものの、五体満足な姿で連れ去られていた女性が発見された。


「これで一先ずは一件落着だが……。コイツの正体が謎だな。」


 俺はリーダーの男が飲もうとしていた、黒い液体の入った瓶を取り出す。コレについても問い詰めたのだが、詳しい事はわからなかった。

 鑑定のスキルを使っても、説明欄にと表示されるだけで、一体どんなものなのかさえ知ることはできなかった。


「でもそれ、脱走する前に変な囚人にもらった……とか言ってたよねぇ。」


「あぁ、しかし脱走した犯罪者の名前と顔をアイツに見せたが、コレをもらったという人物はいないと言っていた。」


「となれば、囚人を騙った何者か……って話になるねぇ。」


「今回の脱走事件に、そいつが絡んでそうだな。」


「アタイもそう思う。」


 この変な液体を配った輩を捕まえることができれば……真相に近づけそうな気がする。しかし、顔も名前もわからないから、かなり難しい話だ。


 ドーナとそんな話をしていると、ランが首を傾げながら問いかけてきた。


「じゃあ、次はその変なのを渡した人間を探せば良いのかしら?」


「いや、それは後回しで良い。そいつの人物像が一切わからないし、手がかりも何もないから。」


 それよりも、今は1日も早く各街の閉鎖を解除するために、この犯罪者達を捕まえるのが先決だろう。


 そして、連れ去られていた女性たちが医者と兵士達に運ばれていったのを見届けて、リコルの街を出ようとした時だった。


「ん?どうした?」


 俺の頭の上に乗っかっていたメリッサのハチが、夜闇をジッ……と睨み付けながら、ヴヴヴ……と激しく羽音を鳴らし始めたのだ。


「テメェらだなァ?オレ達を捕まえに来やがった国のイヌは。」


 すると、夜闇からぞろぞろと男達が姿を現す。その男たちは脱走した犯罪者達だったのだ。数を数えてみると、まだ捕まっていない人数とピッタリ一致する。


 どうやら、一致団結して俺達のことを潰しに来たらしい。


 そんな男たちへ、ドーナは威圧的に語りかける。


「探す手間が省けて助かるよ。大人しく縄についたら、ボコボコにしなくて済むけど……投降するやつはいるかい?」


「ハッ!!んなことしねぇよ!!テメェらはここで終わりだ!!」


 すると、男たちは全員一斉にあの黒い液体を飲んでしまった。その次の瞬間……男達の体に変化が現れる。

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