ベテラン捜査員ドーナ


 エートリヒから依頼を受けた後、王都にある喫茶店に入って、俺達は早速作戦会議を始めた。


「さて……先ずどこから手を付けようか。」


「同じ顔のやつを皆殺しにすれば良いのではないか?」


「ダメに決まってるでしょ!!もし間違ってたら、ワタシ達が今度は犯罪者になるじゃない。」


「むぅ……。」


 レイのメチャクチャな発想に、ランのツッコミが入る。


「ドーナは何か良い方法とか知らないか?」


「アタイが冒険者やってた頃もこういう依頼は何回かあったけど、どれも地道に目撃情報とかを頼りに探したよ。」


 やはり、地道に探すのが一番効率がいい方法か。となれば早速近くの街から足を運んでみるか。


「じゃあ早速近くの街から探してみるか。」


「っと、それは今回はちょっと良くないかもしれないよ。」


「なんでだ?」


「今回に関してはあまりにも数が多すぎるんだ。一個の街を潰したつもりでも、そこにすぐに別の奴が入ってくる可能性もある。」


「じゃあどうするんだ?」


「簡単さ、まずは目撃情報のあった一番端の街から潰してくのさ。不思議なことに、こういう輩は耳が早くてねぇ……どっかの街で誰かが捕まったってなれば、その情報の出た街から足早に離れていくんだよ。その逆張りもたまにいるけどね。」


 その話を聞いて、俺はドーナの考えている作戦をようやく察することができた。


「つまり、端っこからどんどん内側に追い詰めていく……ってことか。」


「そういうこと。そうすればまとめて一網打尽だって夢じゃない。」


「なるほどな。」


 その作戦はアリだな。かなり理にかなっていると言える。


「じゃあまずはどこから攻める?」


「国の端っこで潰しやすいのは……このレストって街だね。ここは本当に国の端っこで、すぐ近くには海と種族を仕切る壁があるんだ。」


「よし、そうと決まれば早速行ってみよう。」


 作戦会議を終えて喫茶店を出ると、俺はレイにこの国の地図を手渡した。


「レイ、ここに行きたいんだが……。」


「任せるのじゃ主!!このレイにかかれば、一瞬じゃぞ。」


 パチンとレイが指を鳴らすと、俺達の立っている地面に魔法陣が展開された。そしてそれが眩い光を放つと、次の瞬間には俺達は王都から別の場所へと転移してきていた。


「む、少し座標がズレてしまったか。」


 俺たちが転移して来たのは、見慣れない浜辺だった。だが、向こうにちゃんと街が見えている。


「いや、寧ろここで良い。あんまり目立ちたくないからな。」


 ドーナの話だと犯罪者ってのは耳が早いらしいからな。ド派手に街中に現れては、警戒されるかもしれない。


 そして俺達は浜辺を歩いて、向こうに見えるレストという街へ向かうのだった。

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