強襲


 みんなと試食会を終え、エルフの国へと戻る準備を進めている最中……俺の目の前の地面に魔法陣が現れる。


「ん?」


 その魔法陣が光を発し始めた瞬間……背筋にゾワッと悪寒が走る。


「なんかヤバい!!みんな、伏せろ!!」


 そう叫びながら俺は体を一気に龍化させ龍となり、巨大な翼で魔法陣を包みこんだ。その次の瞬間……魔法陣が大爆発した。


「ぐうっ……。」


 衝撃は凄まじいが、流石はカオスドラゴンの肉体だ。鱗にすら傷一つつかない。


「みんな、大丈夫か?」


「アタシ達は傷一つ無いけど……社長は大丈夫なのか?」


「俺のことは心配ない。それよりも、早く転送の結晶を使ってエルフの国へ戻るんだ。」


「で、でも……。」


「早くっ!!」


 急いでみんなを帰らせると、俺の前に見覚えのある人物が降り立った。


「お前は……。」


「久しぶりだな、僕の腕を奪ったクソ野郎。いや、クソドラゴン。」


 目の前に降り立ったのは、隷属の腕輪というアイテムを使い女性を自分に服従させていた、あの男だった。


「お前は捕まったはずだろ。なんでここにいるんだ。」


「僕を拘束してた兵士ならこの手で殺したよ。」


 男は消し飛ばされたはずの右腕を前に出して、グッと握り込んだ。その腕はもはや人間の腕ではなく、まるで魔物の腕をくっつけたような異形の代物に変わっていた。


「弱いお前が兵士なんて殺せるわけないだろ。何か卑怯な手でも使ったか?」


「ふん、今の僕は死の女神イース様から直々に力を授かったんだ。あの程度のゴミを殺すのなんて簡単だった。」


「ゴミはお前のほうだろ。隷属の腕輪なんて物を使った挙げ句、死の女神に力をもらった?他人から与えられた力で人を殺して、良く喜べるな。」


「黙れ!!イース様はお前を殺せば、僕の望みを叶えてくれると言った。だから……お前はっ!!僕のために死ねッ!!」


 男は異形の右手を振りかざして、凄まじい速度でこちらに突進してくる。俺が迎撃しようとすると、ミクモが間に割って入った。


「卑しい人間……身の程を弁えるのじゃ。」


 彼女は蔑むような視線を男へと送りながら、男の頭へ踵を落とす。


「ぐがっ!?」


 その威力は凄まじく、男の頭が地面にめり込んでいた。そんな男の首根っこを引っ掴みながら、ミクモは強引に男を地面から引っこ抜く。


「この国は獣人族の国である。貴様のような人間の暴挙は許さん。」


「獣風情が僕に触……ぐぶっ!!」


「五月蝿い。」


 ミクモは、言葉を発した男の顔面を再び地面に叩きつける。


「貴様、死の女神に力をもらったとかほざいていったのぉ?」


 男の頭を再び彼女は持ち上げながら追いかける。


「が、あ……。」


「実はちょうど死の女神について、尋問していた輩が奪われてなぁ。後釜を探していたところじゃ。貴様にはその役目が相応しかろう。」


 そう言って、もう一度男の顔面を地面に叩きつけ、完全に意識を刈り取ると、ミクモは男を引きずって王宮の方へと歩いていってしまった。

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