シンからの伝言
獣人族の国でもお菓子の売れ行きは素晴らしく、あっという間に在庫がなくなってしまう。それは、隣で営業をしていたミクモも同じで、豆腐と豆腐を使ったおかずを売り切っていた。
「めでたく完売じゃ!!お嬢ちゃんら、ありがとのぉ〜。」
表情を綻ばせながら、ミクモはシア達を撫で回す。
「シア達ちゃんとお手伝いできた?」
「ほんとに…たべてただけ…だけど。」
「いやいや、それが功を奏したというわけじゃ。嬢ちゃんらが美味しく食べている姿は、道行く人々の目を引いた。故に全ての商品を売り切ることができたのじゃ。」
「その通りだ。みんな、ありがとう。」
俺もシア達の頭を撫でていると、飲食スペースのテーブルの上からポテッと柔らかい音を立てて、お腹が膨らんで飛べなくなったグレイスが落っこちてくる。
そのままコロコロと転がって、こちらに近づいてきた。
「じ、自分もいっぱい食べたっすよ〜。」
まん丸になって、すっかりマスコットらしくなってしまったグレイスを地面から拾い上げる。
「グレイスもありがとな。」
「いっぱい食べて感謝されるなら、ずっとこのお手伝いやりたいっす〜。」
そ、それは流石にちょっとな。今回グレイスは俺が想定していたよりも遥かに多く食べたし……今後もこれを続けるとなると、赤字が見えてくる可能性もある。
「ま、まぁまた機会があったらな。」
「その時は絶対呼んでほしいっす!!」
グレイスの頭を撫でながら、片付けを進めていると、こちらにレイラが歩いてきた。
「皆様、お疲れ様でございました。」
「レイラ、どうしたんだ?」
「シン様より伝言を預かってまいりました。今宵、三種族の交流再開を祝って宴会を開くので、よければ皆様方も……とのことです。」
「おっ、そういうことならお邪魔しようかな。」
「妾も行くのじゃ!!」
「他のエルフの皆様方はいかがなさいますか?」
レイラにそう問いかけられると、みんなは少し悩み始めた。こういう時は、一つ背中を押してやらないとな。
「みんな、今日は帰ったら仕込み作業しなくて良し!!」
「「「えぇ!?」」」
俺のその言葉に社員のみんなが一斉に驚いた。
「な、なんでだ社長!?」
「それじゃ明日の営業が出来なくなりますよぉ〜。」
「問題ない。それは俺がなんとかする。……っと、そういうわけで、今日の宴会には社員みんなで行くぞ〜。」
楽しめる時には、みんなで楽しまないとな。エルフの国で営業してるアンネ達も、帰ったら誘ってみよう。
そして宴会への参加が決まった所で、俺の近くにレイラが歩み寄ってくると、申し訳無さそうにあることを耳打ちしてきた。
「…………お願いできますでしょうか?」
「あぁ、それについては任せてくれ。」
「ありがとうございます。それでは、皆様の来訪を心よりお待ちしております。」
ペコリとこちらに一礼して去っていったレイラを見送って、俺達も一度エルフの国へと帰るのだった。
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