最後に残ったのは…


 長く続いたこの我慢比べもようやく終わりが訪れた。


「く……む、無念だ。」


「きゅぅ……。」


 すっかり酔いが回り顔を真っ赤にして、カリンとフィースタはテーブルに突っ伏した。


「きょ、強敵だった。」


 俺も、あともう少しでダウンするところだった。一つ大きく息を吐いていると、カリンの事を迎えにユリがやってきた。


「ん?元気なのはヒイラギ社長のみか。」


「ゆ、ユリ?」


「こんなに遅くまで帰ってこなかったから、母上の様子を見に来たんだ。そうしたら、まさかフィースタと共に潰れているとは……。」


 ユリは軽々とカリンの事を背負った。


「社長、フィースタの事はお願いしても良いだろうか?」


「あ、あぁ……。」


「母上帰るぞ。」


「うぷ、気持ち悪いぞ。」


「た、頼むから背中で吐かないでくれ。屋敷まではすぐだ。」


 なるべく負荷をかけないように、ユリはカリンのことを背負って屋敷へと帰っていった。


「さて、フィースタ動け……ないよな。」


 既に寝息を立て始めているフィースタをお姫様抱っこして、彼女の屋敷へと運ぶ。

 すると、その道中でゆっくりと彼女は目を開けた。そして今の状況を把握すると、既に赤かった顔をさらに真っ赤にして、両手で覆い隠した。


「はわわ……わ、私っ。」


「気づいたか。気持ち悪くないか?」


「だ、大丈夫ですけど。これは別な問題が……。」


「もう少しだから、我慢してくれ。」


 彼女の屋敷に入り、一直線にフィースタの寝室を目指す。


「あ、あのもう歩けるので……。」


「本当か?」


 彼女の言葉を信じて、地に足をつけさせてみるが、やはり千鳥足で足元がおぼつかない様子。


「きゃっ!?」


「おっと、危ないぞ。」


 前のめりに転びそうになった彼女を受け止める。


「ほら、手を貸すから。」


「あ、ありがとうございます。」


 彼女の手を握り、転ばないようにエスコートして彼女の寝室の扉を開けた。

 フィースタの屋敷にもしばらく住まわせてもらったが……この中に入るのは初めてだな。


 部屋の中は几帳面なフィースタの性格を表すように、きっちりと整っていた。まるで高級ホテルのベッドのようにメイキングされたベッドの上に、ゆっくりと彼女を寝かせる。


「すみません、ご迷惑をおかけしました。」


「いいんだ。とにかくゆっくり休んでくれ。」


 そして俺は彼女の寝室を後にした。


 ヒイラギが寝室を去った後、ベッドの上に横になったフィースタがポツリと呟く。


「作戦は失敗ですね……。でも、良いことを聞きました。ヒイラギ様は、たくさんの女性に囲まれていますが、……ふふ。」


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