酒豪vs酒豪


 隣に座ったフィースタの顔はほんのりと赤く、彼女自身少々酔っているようだった。


「あなた様、楽しんでおられますか?」


「もちろん。お酒も料理も美味しいし、今日はこんなにもてなしてくれてありがとう。」


「でもあなた様はまだ酔っていないご様子ですね?」


「まぁ、自慢じゃないが酒にはかなり強いと思う。」


 すると、俺の横で酒をラッパ飲みしていたカリンがその言葉を聞いてニヤリと笑う。


「社長よ、此方等のもてなしを最大に受けるのであれば……酔っ払ってもらわねばな。」


 そう言って、カリンは手にしていた酒を俺のコップに溢れんばかりに注ぐ。


「今宵は酔い潰れるまで逃さんぞ?」


「私達も一緒に付き合いますからね。」


 そして二人は俺の両側を抑え込むように、ぎゅっと体を密着させてくる。どうやらこれは本当に逃がしてもらえそうにない。

 だが、俺もやられっぱなしというのは性に合わないのだ。


「それじゃあせっかくだから、一緒に飲みましょうか。」


「む。」


「あら……。」


 近くにあった酒を手に取り、二人のコップへと注ぐ。するとこちらの意図を察した二人は不敵にニヤリと笑い、すぐにそれを飲み干してしまった。


「さぁ、今度は社長の番だ。」


「ふふふ、私達は何百年とこのお酒を飲んでいますから……。そう簡単には潰れませんよ?」


「参ったなこれは。」


 この二人は外見上はとても若く見えるが、本当は俺の何倍もの時間を生きている。人生の大先輩だ。

 フィースタも言っている通り、彼女たちは何百年とこのお酒を飲んできている経験値もあるし、これは厳しい戦いになりそうだ。


 思わず冷や汗を流しながら、俺はカリンに注いでもらったお酒を、二人に負けじと一気に飲み干した。


「ん?」


 カリンに注いでもらったそれは、先程まで飲んでいたものよりも少しアルコールが強く感じた。しかし、それを不思議に思っている暇もなく、フィースタが新しい酒を空になったコップへと注いでくる。


「はい♪どんど〜ん♪」


「くく、社長……夜はまだまだ長いぞ?此方等と我慢比べと洒落込もうではないか。」


 もはや両隣の二人は、お酒をラッパ飲みし始めている。マジでとんでもない酒豪だ。


 結局、エルフの最高権力者二人との酒の強さ比べは、深夜遅くまで続いたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る