再び交わる三種族
みんなと一ヶ月ぶりの再会をたっぷりと喜んだ所で、俺は三種族の面会の場へと足を運んだ。
全員が席についた所で、エートリヒが口を開く。
「まずは、このように三種族が一同に会する機会を作って頂き、ありがとうございます。」
そう言ってエートリヒはその場で頭を下げた。
「構わん、寧ろ此度はこちらから願ったこと……。エートリヒ殿、貴殿が頭を下げる道理はない。」
「そうはいきません。我々人間は、過去に獣人族やエルフを虐げてしまった過去があります。」
「確かにそれは変え難い事実ではある。しかしだな、過去は過去……今は今だ。此方らエルフも、社長という一人の人間と関わることで、今の人間にはこんな他者を思いやれる者がいることを知った。」
そう語りながら、カリンは手元にあった湯呑みでお茶を飲む。
「時が経てば、変わらぬものなどない。今の人間は、王も変わり……国に住む民も獣人族と交流を再開できるほどに変わった。これもまた事実である。」
カリンの言葉にシンが何度も何度も頷いている。
「此方らエルフは、歴史を繰り返さぬよう他種族との関わりを絶ってきたが……それも変わるときが来たのやもしれん。」
「ということは、エルフも遂に我らと再び交流をしてくれるのか!?」
「此方はそれも悪くはないと思っている次第だ。」
「おぉ!!」
エルフと交流ができるかもしれないと、喜んでいたシンだが、カリンは二人にある条件を提示した。
「しかし、現状エルフの民が心を許したのは社長のみである。仮に交流を始めるとして、他種族がエルフの国の中へ足を踏み入れることに対して恐怖心を抱く者も少なからずいる。それを踏まえ、まずはこういう条件で少しずつ親睦を深めていきたい。」
すると、フィースタがシンとエートリヒに、その条件が書かれた紙を手渡した。
「こちらが提示する条件だが……エルフ国への入国は、社長及び社長と親睦が深く、此方が認めた者のみとすること。それ以外の者の入国は暫し時が経ち、エルフ全体が他種族へ慣れてきた時に解禁する予定だ。」
まぁ、こればっかりは仕方がないかもしれない。まだエルフの中に、他種族への恐怖心を抱いている人はいるだろうからな。
「この条件を飲めるというのであれば、その紙に名を書いてもらいたい。」
すると、シンとエートリヒの二人は何の躊躇もなく、その紙に名前を刻んだ。
「これでよろしいですか?」
「我もしっかりと名を刻んだぞ。」
「配慮に感謝する。」
その名前が書かれた紙をフィースタが回収した。
「では、これからよろしく頼む。」
「うむ!!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。それでは、もう少しこれからの交流について話を煮詰めましょうか。」
三種族の交流へと向けて、エートリヒ達は綿密に話し合いを進めるのだった。
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