ユリの新しい働き口


 カリンの想いをくみ取り、俺はユリにある提案をしてみた。


「そんなに今の仕事に不満があるなら、試しに働いてみるか?」


「え、い、良いのか?アタシはお前に剣を向けてしまったんだぞ?」


「まぁ、一時の過ちって誰にでもあるものだからな。」


「社長もこう言ってくれているのだ。試しに働いてみたらどうだ?」


「う、うん……それじゃあよろしく頼む。」


「それじゃあ早速、今日の夕方に研修をしたいんだが……予定は空いてるか?」


「もちろんだ!!」


「それじゃあ今日の夕方、この場所に来てくれ。」


「了解した。」


 そして二人に見送られて、カリンの屋敷を後にしようとすると、その際にカリンにあることを耳元で告げられた。


「社長よ、恥ずかしながら我が娘であるユリは世間知らずだ。此方が甘やかして育ててしまったばっかりに、いろいろと迷惑をかけてしまうやもしれん。」


「大丈夫ですよ。誰だって最初からうまくやれるわけじゃないんですから。」


「すまんな、恩に着る。この埋め合わせはいつかしよう。」


 カリンにユリのことを託され、俺は営業に戻るのだった。





 夕刻になると、誰よりも早くユリが仕込みをする場所で待っていた。


「あ、しゃ、社長。」


「お、随分早いなユリ。やる気があって何よりだ。」


「あの…その、非常に言いにくいんだが、実は生まれてからというものの自分で料理をした経験がなくてだな。少し不安なんだ。」


「ん、むしろそれは助かるかもな。」


「な、なんでだ?普通こういうのって経験があったほうがいいんだろう?」


「確かに、普通ならそうだろうな。だが、これからやってもらうのは、今までみんながやってきたような料理じゃないんだ。だから、経験は関係ない。」


「そうなのか……。」


 少し安心したように、彼女はホッと一つ安堵のため息を吐き出した。


「もうそろそろみんなが来ると思うから、先にこれに着替えると良い。」


 裁縫が得意なハリーノに社員みんな分のエプロンを作ってもらっていたのだ。これはその際に予備として作ってもらったもの。


「わ、わかった。すぐに着替えてくる。」


 そしてユリは更衣室にした部屋に入って行った。彼女が着替えているのを待っていると、今日の仕込み担当の社員のエルフたちがやってきた。


「しゃ、社長~お疲れ様です。」


 真っ先に挨拶に来たのはハリーノだ。


「やぁハリーノ。今日は一人新入社員がいるから、よろしく頼むな。」


「新しい人が入ったんですかぁ?な、仲良くできるか心配ですねぇ。」


「大丈夫、寧ろ向こうの方が心配してると思う。そういうわけだから、みんなもよろしく頼む。」


「「「は~い!!」」」


 元気に返事をしてみんなも更衣室へと向かって行った。多分顔合わせは更衣室で終わるだろう。後はユリに手取り足取り仕込みの手順を教えるだけだ。明日は俺も面会に同席しないといけないから、今日で教えられることは教え切らないと。


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