約束の時


 翌朝……フィースタが焦ったように、俺の部屋に飛び込んできた。


「お、起きてくださ〜い!!大変ですよ!!」


「ん……んん?フィースタ、そんなに焦ってどうしたんだ?」


「世界樹の芽が出たんです!!」


「なんだって?」


 いくらなんでも早すぎる。昨日の今日だぞ!?


 フィースタに手を引かれて、昨日カリンが世界樹の果実を埋めた場所を見に行くと、そこにはすでに大量のエルフが詰めかけていた。


 それを掻き分けて、カリンがこちらへ歩いてくる。


「来たな、フィースタに社長よ。」


「世界樹の芽が出たとか?」


「あぁ、どうやらそうらしい。」


 そして彼女の後に続いて、昨日世界樹の果実を埋めた場所へと足を運ぶと……。


「なっ?」


「確かに……大きな若葉が出てる。」


 そこには大きな若葉が地面から力強く生えていた。


「恐らくは、この大地の生命力と魔力をふんだんに含んだあの果実ごと、土に埋めた故にこんなに早く芽が出たのだろう。」


 カリンは愛おしそうに、その世界樹の若葉を見つめている。


「フローラ。」


 そしてフローラの名を呼ぶと、どこからか音もなくフローラはカリンの元へ現れた。


「世界樹の管理は任せるぞ。必ずや先代の世界樹を超える樹に育て上げるのだ。」


「承知いたしました。」


 カリンは頭を垂れるフローラの頭を撫でると、こちらへと歩み寄ってくる。


「社長よ、まだ営業までは時間はあるな?」


「そうですね。まだ時間は大丈夫です。」


「ならば、フィースタと共に此方の家に来い。少々話をしよう。」


 そして俺とフィースタはカリンの屋敷へと招かれた。そこでカリンのもてなしを受けながら、ある話を切り出された。


「社長、此方との約束を覚えているか?」


「満足させたらなんでも一つ言うことを聞いてくれる……ってやつですよね?」


「その通りだ。正直なところ、此方は現状非常に満足している。社長の作る甘味を毎日食べられることも然り、世界樹の子孫が芽吹いたことも然りだ。」


「それってつまり……。」


「少し早いが、社長の願いを聞き届けようと思ったというわけだ。」


 そう言ってニヤリとカリンは笑うと、マンドラ茶を口にした。


「そなたの願いは決まっているのだろう?」


「もちろん。」


「ふっ、まぁだいぶわかりきったことではあるが……このカリンが聞き届けようぞ。述べるがいい。」


 そして、俺はカリンに新しくなった人間の国王と、獣人族の国王と一度面会してほしいという旨を伝えたのだった。

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