新入社員
その後、カリンから借りることのできた大きなキッチンのある家にみんなで集まり、実際に彼女達にあんこの作り方だったり、マンドラアイスクリームの作り方等を教えていった。
エルフということもあってか、みんな手先が器用で飲み込みが早く、あっという間に仕込み作業が終わってしまった。
「みんなお疲れ様、今日の仕事はもうお終いだ。」
「え、もう終わりですか?」
さっき質問をしてくれた新しい社員のアンネは、キョトンとしながら問いかけてきた。
「あぁ、みんな頑張ってくれたお陰で早く終わったよ。」
一人でやったら徹夜しないといけなかった作業が、大人数でやると数時間で終わってしまった。
「さて、実際に動いてみて……どうだったかな?自分この仕事は向いてないとか、そういうのを感じたりしてないか?」
そう問いかけてみるが、誰一人としてそんなことを思っている人はいないようだった。
「よし、わかった。それじゃ今日のところは解散だ。帰ってゆっくり休んでくれ。」
「「「お疲れ様でした!!」」」
そしてみんな各々の家へと帰っていく。それを見送ってから、一つ大きく息を吐き出すと、こちらにフィースタが歩み寄ってきた。
「お疲れ様でした。」
「あぁ、フィースタか。」
「彼女達の仕事ぶりはどうですか?」
「みんな手先が器用だから、覚えが早くてすごいよ。これならすぐに仕込みを任せられそうだ。」
「それは何よりでした。」
まるで自分のことのように、嬉しそうに彼女は笑う。
「そういえば、新作のお菓子の試作は今日はしないんですか?」
「実は明日出す予定の新作はもう作ってあるんだ。」
「えぇ!?いつの間に……。」
「さっきみんなで仕込みをしてる間に、チョチョイとな。」
「ちなみにどんなお菓子なのか伺っても?」
「せっかくだし、フィースタに食べてもらおうか。」
俺は氷の魔石によってキンキンに冷えている冷凍庫から、さっき作った新作のスイーツを持ってきた。
「ほい、明日発売の新作はコレだ。」
「これは……大福ですよね?」
「そうだな。ただし、中身はまるっきり違うぞ?食べてみてくれ。」
「それでは、いただきます。」
冷気を発している大福に、フィースタが口を当てると……。
「はわっ……つ、冷たいですね。」
冷たさに少し驚きながらも、彼女は一口それを食べた。すると、すぐに彼女は食べた断面に目を向ける。
「これ、マンドラアイスクリームとこしあんが中に入ってますね。」
「大正解、ちなみに更に食べ進めると、あと一つ入ってるものに気がつくはずだ。」
味わいながらフィースタは更に食べ進めると、最後の中身に気がついた。
「これはべリリ……ですか?」
「そう、べリリのジャムだな。」
「まるで今までのお菓子を全部合体させたような、お菓子ですね!!」
その通り、これ一つで今売っている全てのお菓子の美味しいところを味わえるという、贅沢な一品だ。
名付けるなら……欲張りアイス大福って感じかな。
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