変わり始める人間への印象
夕刻……本日の営業を滞りなく終えると、片付けをしているところに再びカリンがやってきた。
「社長や、そなたの会社に入りたいと、ずいぶん多くの応募があったぞ。」
「本当ですか?」
「嘘は言わん。で、その中から此方がこの国で重要な役割に就いていない者を厳選したぞ。」
「そこまでやってくれたんですか……。」
「これも未来への投資のようなものよ。手が空いたら此方の屋敷へ参れ、そのエルフ達と面会をしよう。」
「わかりました。」
それだけ伝えて、カリンは踵を返して去っていく。それにしても……まさかそんなにたくさん応募があるなんて思ってもいなかった。
エルフ達の人間への印象が、少しずつ変わり始めたのだろうか?まぁなにはともあれ、これはとてもありがたいことだ。
俺は片付けを手早く終わらせると、早速フィースタの案内の元、カリンの屋敷へと赴いた。
「おっ、来たな社長。」
「その呼び方やめません?やっぱりむず痒いんですけど。」
「此方はやめろと言われると、やりたくなる性分でな。諦めてくれ。っと、まぁそれよりもこの中に甘味を学びたいと此方の元を訪れた我が子らがいる。早速入るぞ。」
カリンの後に続いて部屋に入ると、そこには緊張で顔が引き攣っているエルフが約10人ほどいた。
「さて我が子達……これから社長が説明やら何やらをしてくれる。心して聞くのだ。」
そしてカリンは席に座る。俺は一先ず緊張でピン……と糸が張り詰めている彼女達へ、声をかけた。
「皆さん、はじめまして。最近この国でお菓子を売っている、人間のヒイラギです。一先ずそんなに緊張しなくていいから、肩の力を抜いて説明を聞いてください。」
自己紹介を終えた後、俺は業務の内容とか諸々を説明していく。彼女達は真剣になってその話を聞いていた。
「とまぁ、以上なんだけど……何か質問のある人とかはいる?」
「あ、はいっ!!」
そう問いかけると一人のエルフが手を挙げた。
「質問をどうぞ。」
「え、えっと……お手伝いすれば、あなたが売っているお菓子が無料になるって話は、ほ、本当でしょうか?」
「本当です。約束しますよ。」
「あ、ありがとうございました!!」
「他に質問は……大丈夫みたいですね。」
質問がこれ以上無いことを確認すると、カリンが声を上げた。
「さて、社長……この中から誰を雇うのだ?」
カリンの言葉で再び緊張が高まったのか、エルフ達の心臓の音がここまで聞こえてくるようだ。
だが、カリンの質問に対する答えは決まっている。
「一先ず全員雇います。」
この仕事が合う合わないは、今ここで彼女達でさえ、見極めれるものじゃない。自分に合ったら続ければ良いし、合わなかったら辞めればいい。
こちらからすれば、一人でも続けてくれたら御の字なのだ。
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