ヴェールを探して


 ホスプのあちこちに設置されている足湯の温泉を、ほぼ貸切状態で楽しんでいると、マグマゴーレムを討伐したらしいリリン達が戻ってきた。


「お帰り。怪我はないか?」


「ふふん、心配無用よ。私もフレイも、ライラだって怪我はないわ。」


「そっか、なら安心したよ。」


「ほらほら、邪魔者は片付けたんだから、とっととヴェールって街に行くわよ。何としてでも願いを叶える果実を手に入れるのよ!!」


「はいはい、わかったよ。」


 ホスプヘと迫る脅威を排除し、俺達は次なる目的地……ヴェールへと向かうのだった。





 そしてまたグレイスに跨って、ヴェールへと向かって飛んでいると、下に見える大地がどんどん深い森へと変わっていった。


「凄いな、本当に一面が森だ。」


 文明的なものは今のところ見えないが……本当にこんなところに街があるのか?


「グレイス、何か下に建物とか……見えないか?」


「いやぁ〜、今のところ見えないっす。」


「そうか。この辺のはずなんだけどな。」


 樹海のような光景を見下ろしながら、人工物を探していると、俺の目にある物が留まった。


「ん?あれは……。」


 深い樹海の中に紛れるように、ツリーハウスのような物が建築されている。


「グレイス、あそこに向かって降りてくれ。」


「了解っす!!」


 一気に樹海の中へと急降下し、それを確認してみるが……。


「この一軒だけ……か。」


 このツリーハウス以外に建造物は見えない。


「街ならもっと建物があるはずだし、ここは普通に誰かの家なのかな。」


 だが、人の気配は感じない。留守なのかな?


「人が居れば道を聞けると思ったんだが……残念だ。」


「ここ違うっす?」


「あぁ、違うみたいだ。もう少しこの辺りを探してみよう。」


「了解っす!!」


 そして再びグレイスとともに上空へと舞い上がり、ヴェールを探し始めた。


 ヒイラギ達が飛び去った後、誰もいないと思われたツリーハウスからフードを被った女性が姿を現した。


「な、なんで人間がここを……。結界を張っていたはずなのに。」


 顔から一粒汗を垂らしながら、彼女はヒイラギ達が去って行った空を見上げている。


「ワイバーンに乗った人間……いったい何者なの?」


 その時ふわりと風が吹き、彼女の被っていたフードが浮き上がる。すると、特徴的な尖った耳がぴょこんと飛び出した。


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