ヴェールを探して
ホスプのあちこちに設置されている足湯の温泉を、ほぼ貸切状態で楽しんでいると、マグマゴーレムを討伐したらしいリリン達が戻ってきた。
「お帰り。怪我はないか?」
「ふふん、心配無用よ。私もフレイも、ライラだって怪我はないわ。」
「そっか、なら安心したよ。」
「ほらほら、邪魔者は片付けたんだから、とっととヴェールって街に行くわよ。何としてでも願いを叶える果実を手に入れるのよ!!」
「はいはい、わかったよ。」
ホスプヘと迫る脅威を排除し、俺達は次なる目的地……ヴェールへと向かうのだった。
◇
そしてまたグレイスに跨って、ヴェールへと向かって飛んでいると、下に見える大地がどんどん深い森へと変わっていった。
「凄いな、本当に一面が森だ。」
文明的なものは今のところ見えないが……本当にこんなところに街があるのか?
「グレイス、何か下に建物とか……見えないか?」
「いやぁ〜、今のところ見えないっす。」
「そうか。この辺のはずなんだけどな。」
樹海のような光景を見下ろしながら、人工物を探していると、俺の目にある物が留まった。
「ん?あれは……。」
深い樹海の中に紛れるように、ツリーハウスのような物が建築されている。
「グレイス、あそこに向かって降りてくれ。」
「了解っす!!」
一気に樹海の中へと急降下し、それを確認してみるが……。
「この一軒だけ……か。」
このツリーハウス以外に建造物は見えない。
「街ならもっと建物があるはずだし、ここは普通に誰かの家なのかな。」
だが、人の気配は感じない。留守なのかな?
「人が居れば道を聞けると思ったんだが……残念だ。」
「ここ違うっす?」
「あぁ、違うみたいだ。もう少しこの辺りを探してみよう。」
「了解っす!!」
そして再びグレイスとともに上空へと舞い上がり、ヴェールを探し始めた。
ヒイラギ達が飛び去った後、誰もいないと思われたツリーハウスからフードを被った女性が姿を現した。
「な、なんで人間がここを……。結界を張っていたはずなのに。」
顔から一粒汗を垂らしながら、彼女はヒイラギ達が去って行った空を見上げている。
「ワイバーンに乗った人間……いったい何者なの?」
その時ふわりと風が吹き、彼女の被っていたフードが浮き上がる。すると、特徴的な尖った耳がぴょこんと飛び出した。
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