国王と対面


 薄明りに照らされた城の中へと続く隠し通路を進んでいると、奥のほうに上へと登る石造りの階段が見えた。エートリヒがこの通路は一本道と言っていたから、恐らくあそこが城の中へと入ることのできる入り口なのだろう。


 その階段を登り、登った先に現れた木製の古い扉を開けた。


「ゲホッ……埃が凄いな。」


 扉を開けると長年降り積もった埃が舞い上がる。咳き込みながら前に進むと、そこは……。


「ここは、書庫か?」


 目の前にはズラリと大きな棚が並んでおり、その棚にはぎっしりと大量の本が所狭しと並べられている。


「あぁ間違いない、ここは王城の中にある書庫だ。」


「まさかこんなとこに隠し通路があったなんて知らなかったぜ。」


「ここが書庫ならば、玉座の間まではすぐにたどり着けるはず、早く向かわなければ。」


 ここから玉座の間へと移動しようとしたとき、聞き慣れない声が書庫に響いた。


「その必要はない。」


 声が聞こえた方を振り向くと、きらびやかな王冠を被った初老の男性がカツンカツン…と足音をたててこちらへと歩いてきていた。その姿を見て確信する。

 この人が国王だ。最大限に警戒をしつつ、国王に目を向けているとバイルが口を開いた。


「陛下、オレ達が何でここにいるのかは、わかっておられますな?」


「バイル、やはり貴様は洗脳が甘かったか。だが、ダグラスにカムジンはきっちりと落ちていたはずなのだが……大方そこの者に正気に戻されたのか。」


 ニヤリと笑い国王はこちらを見てくる。


「それに、ずいぶんと因縁のある者までいるではないか。この隠し通路を教えたのも貴様だろう?。」


 くつくつと笑う国王をエートリヒは静かに睨み付ける。その瞳には憎しみが宿っている


「エートリヒ?」


 バイルが聞き慣れない名前に首をかしげる。


「なんだまだ話してないのか。では教えてやろう、そこのオーナルフという者の真名はアドルフ・エートリヒ。100年前謀反を起こされた、忌まわしき国王の末裔だ。」


 皆の視線が降り注ぐなか、エートリヒは静かに怒りを込めて口を開いた。


「忌まわしき国王……だと?貴様がそれを言うか?洗脳という卑劣な手段で、国王の座を手に入れた貴様がっ!!」


「この世界は力のあるものが上に立つ。貴様の先祖はその力が無かっただけのこと。……さて、無駄話はこの辺にしておこう。邪魔者には消えてもらわねばならんからな。」


 パチン……と国王が指をならすと、地鳴りとともに何かがこちらに近づいてくるのを感じる。とても強い気配だ。どうやら国王はここで俺達を始末するつもりらしい。


 バイル達を下がらせ、地鳴りのする方を見つめ集中力を高めるのだった。

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