潜入成功


 永遠にも感じられた、グレイスとの壮絶な飛行の時間もついに終わりが訪れたようだ。トップスピードから徐々に速度を落としつつ、グレイスは言った。


「ヒイラギさん、すんごいおっきな街が見えるっす!!」


「もう少し高度を落としてくれ、着陸できそうな場所を探すから。」


 グレイスの目には下にあるその王都らしき街が見えているのだろうが、残念ながら俺には見えない。何せ、今はまだ雲の上にいるのだから……。


「了解っす。でもバレないっすかね?」


「漂っている雲に隠れながら行けば問題ないだろう。とにかく街が見えれば十分だ。」


 街さえ目に入れば、後は人気のないところを見つけて着陸すればいい。そしてグレイスは少しづつ高度を下げていく。厚い雲を抜けると、そこにはマーレなどの街が比較にならないほど大きく、発展した街が見えた。

 その街の中央には、まさに巨城……と呼ぶにふさわしい、大きな西洋式の建物があった。


「あれが城か。」


 きっとあそこに国王がいるはずだ。目的地はあそこだが、直接向かうわけにもいかないな。


「あそこらへんがちょうどよさそうだな。」


 城から少し離れたところ、かつ人通りが少なさそうな場所を見つけたので、さっそくグレイスに向かうように指示を出した。


「グレイス、あの端っこのほうに向かってくれるか?」


「了解っす!!」


 指示通りグレイスは指し示された方向へ向かい、その直上でホバリングする。


「それじゃ、グレイス先に行くぞ。」


「うえっ!?ヒイラギさん何してるっす!?」


 驚くグレイスを置いて、俺は背中からぴょんと飛び降りた。


「グレイスは体を小さくして、見つからないようにしてから来いよ~?」


 落下しながらグレイスに手を振る。


「ちょ……マジっすか!?」


 ぐんぐん俺の体は重力に従い、地面へと向かって、加速しながら落下する。そして地面が間近に迫った時、何かに肩を掴まれてふわりと宙に浮いた。


「さすがグレイス、よくやってくれたな。」


「あ、あとちょっと遅かったら危なかったっす!!こんなことはこれっきりにしてほしいっす。じゃないと自分の心臓が持たないっすよ~。」


 俺の肩を掴み、パタパタと羽ばたきながら小さくなったグレイスが言った。意図を察してくれて助かったな。


「何はともあれ、王都に潜入成功だな。」


 次に目指すはあそこだ。眼前にそびえ立つ、大きな城……。あそこに国王がいるはずだ。


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