過酷な空の旅


 次の日の朝、朝食を食べ終えた俺達はバイル達と合流した。いよいよ王都へと出発するのだ。


「では皆さんはこの中にお願いします。王都についたら、安全なところで知らせます。」


 バイル達は指示に従って、続々とバッグの中へと入っていく。そして最後の騎士団の人が中に入ったのを確認して、バッグを肩から提げた。


「じゃあグレイス頼むな。」


「任せてほしいっす!!全開で飛ばすっすよ~!!」


 そういえば進化してから飛ぶスピードも上がったのかな?地を走るスピードは目に見えて上昇していたけど、空を飛ぶスピードも上がっているのだろうか?


 だとしたらちょっとおもしろそうだな。内心ワクワクしながら、グレイスにまたがる。


「振り落とされないように、しっかり捕まっててくださいっす。」


「わかった。」


 落ちないようにしっかりとしがみつくと、グレイスは一気に空高くまで舞い上がった。


「うおぉっ!!」


 じょ、上昇するだけでこんなに負荷がかかるのか!?しっかりグレイスのことをつかんでいないと、今にも振り落とされてしまいそうだ。必死に振り下ろされないように、しがみついていると……。


「ヒイラギさん、大丈夫っすか?」


「ま、まだ何とかな。」


 顔に暴風を受けながら、何とか少し口を開けて答えた。


「安心したっす。じゃあ本気で飛ばすっすね!!」


 余裕そうにグレイスは明るく軽い口調で言う。その瞬間……一気に加速し、体に吹き付ける風が一気に強くなる。口を開くどころか、目を開けることもキツイ。


 どうやら今回の空の旅は、楽しいものにはなりそうにない。周りの景色を楽しんでいる余裕もないからな。

 そして最高高度に到達し、あたりの空気が冷たくなり始めた頃……グレイスがホバリングし始め、やっと休息が訪れた。


「はぁ……。」


「どっちのほうに進めばいいんすか?」


「このまま向いてる方向にひたすら飛んでくれ。」


「了解っす!!それじゃあまた一気に飛ばすっすよ~!!」


 再びグレイスは一気に加速し王都へ向かってと飛んだ。俺はただ背中にしがみつき、いち早く王都へ着くことを祈るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る