王都での立ち回り


 夕食を食べ終えたバイル達は、満足そうに街の宿屋へと戻っていった。肥えた舌を持っている人物でも、サラマンダーの肉は美味しく食べられたようだ。


 サラマンダーのポテンシャル……恐るべしだな。


「やはりいつ食べても、サラマンダーの肉は極上の味わいだったな。」


 シンも満足したようにつぶやいた。そういえば、先ほどバイル達と何を話していたのだろう。ちょっと聞いてみるか。


「さっきご飯を作ってる間、彼らと何を話していたんだ?」


「なんのことは無い、ヒイラギについてずっと聞かれておった。」


 どうやらバイル達は、少しでも俺についての情報を得ようと、シンを質問攻めにしていたようだ。


「恥ずかしい話してないだろうな?」


「聞かれて恥ずかしいことなど一つもあるまい?だからヒイラギの英雄譚をひたすらに聞かせてやった。……少々話を盛ってしまったがな。」


 ガハハと笑いながらシンは言い放った。最後ぼそりといったところは聞き取れなかったが……まぁ大丈夫だろう。


「そうか、まぁ恥ずかしい話をしていないならいいや。」


 さて、みんなにも明日のことについて話しておかないとな。


「みんな、明日のことでちょっと話があるんだけどいいか?」


 集まってくれたみんなに、明日のことについて話すことにした。


「明日王都に入る方向で進むんだが、王都に入ったら俺とリリン以外はバッグの中で待機しててくれ。もし国王と対峙した時に洗脳されたら困る。」


「えっ!?ちょ、私はッ!?」


 焦ったようにリリンが自分を指さして言った。


「リリンは俺と同じ戦闘要員だ。あぁ、大丈夫だぞ。最悪、洗脳されたら速攻で解除するから。」


「なんか最近私の扱いが雑じゃない!?……まぁ、すぐ治してくれるのならそれでいいけど。」


 軽く愚痴をこぼすリリンだったが、しぶしぶ納得してくれた。


「ほかのみんなは、安全が確保されるまではひたすら待機だ。ドーナとランも不満なのは分かるが、今回の敵は厄介だ。洗脳から大勢を守り切る自信はない。わかってくれ。」


 少し不服そうな表情を浮かべるドーナとランを、そう諭した。


「う~、わかったわ。」


「洗脳されてヒイラギに迷惑をかけるわけにもいかないしねぇ。今回は大人しくしておくよ。」


「すまないな、後で埋め合わせはするよ。」


「埋め合わせに何をしてもらうかは、ちゃ〜んと話し合っておくわ。」


 とんでもない要求をされないように……とだけ祈っておこう。だが、これでみんなの安全は確保できたようなものだ。これで明日……王都に踏み込める。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る