忘れていたもの


 バイル達と王都の攻略についての話し合いをしていると、シアがおずおずとした様子でこちらに歩いてきた。


「あ、お兄さん……。」


「ん?シア、どうかしたか?」


「お腹空いちゃったの。」


 申し訳なさそうに、シアは自身のお腹をおさえてそう言った。


 しまったぁ~!!襲撃があったせいで、完全に夕食のことを忘れていた。取りあえず話し合いも一段落ついたし、この辺でご飯にしとかないとシア達がかわいそうだ。


「ごめんなシア、今すぐ作るからもう少しだけ待てるか?」


「うん!!」


「いい子だ。」


 ポンポンとシアの頭を撫でて、俺はバイル達に向き合った。


「一先ず王都攻略については一段落したことですし……そろそろご飯にしたいんですが。」


「あぁ、賛成だ。少し頭も切り替えたいと思っていたしな。カムジンもダグラスもそれでいいな?」


「構いません。」


「構わない、私自身少し気持ちを切り替えたい。」


 バイル達の了承も得ることができたから、早速夕飯を作るとしよう。


「ではここで少し待っていてもらえますか?すぐに作ってきます。シンの通訳は、このグレイスがやってくれるので、遠慮せず話しかけてくださいね?聞きたいこともたくさんあると思うので……。」


 そしてグレイスに通訳を任せた後、コックコートに着替えて厨房へと向かった。すると、炊飯器がちょうどご飯の炊き上がりを知らせてくれた。


 どうやらシアかメリッサのどちらかが、炊いていてくれたようだ。ご飯の量も多く炊いてくれている。これだけあれば全員分を賄えるだろう。


「本当にいい子達だな。助かった。」


 さて、今日は何を作ろうか……と、いつも通り悩みたいところだが、シア達が本当にお腹が減っていそうだから、なるだけ手軽に早く作れるものにしたいな。

となれば‥


「やっぱり丼ものかな。」


 手早く、美味しく……お腹にも溜まるものといえば、丼ものが一番最適だろう。


「それなら、今日はサラマンダーの肉を使って、ステーキ丼にしてみるか。」


 美味しいものを食べ慣れているであろう、バイル達を唸らせるには、サラマンダーの肉が一番適任だ。


 肉の味を楽しんでもらいたいから、軽く塩とブラックペッパーで味付けして、バターが香るソースをかけて食べてもらうことにしようか。

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