誤魔化せないシンの嗅覚


 そしてハウスキットに着き、俺はガチャリ……と扉を開けた。


「あっ!!お兄さん達帰って来た!!」


「ぱぱ…まま…おかえりっ!」


 扉を開けるとシアとメリッサの二人が、駆け足でこちらに駆け寄ってきた。


「ただいま。」


「はぁ~、みんなただいま~。」


 後ろからハウスキットに入ってきたランは、くたびれた様子でソファーに腰かけた。その様子が気にかかったのか、彼女のもとにメリッサが近寄って問いかけた。


「まま…つかれた?」


「あら?心配してくれてるの?大丈夫よ。」


 ぽふぽふとランはメリッサの頭を撫でながら言った。


「それじゃあ今日何をしたのか、アタイに詳しく教えてもらおうかねぇ~?」


 スッとランの向かいにあるソファーにドーナが腰かける。そしてランに一つ紅茶を差し出しながら言った。


「もちろんいいわよ?」


 差し出された紅茶を受け取り、一口飲んでからランはドーナに今日の出来事を話し始めた。あれは暫く終わりそうにないな。


 俺も一服しようと前に進むと、顔になにやらもふもふしたものが当たった。


「ん?シンか……どうしたんだ?」


 そのもふもふの正体はシンのたてがみだった。行く手を遮るようにシンが立っていたのだ。


「スンスン…スンスン……。」


 そしてしきりに俺の服の匂いを嗅ぎ始めた。


「な、なんだ?どうしたんだ?」


 突然のことに少し焦りながらシンに問いかける。すると、逆にシンから質問を投げかけられてしまった。


「ヒイラギよ、今日の昼飯は肉か?」


「い、いや?違うが……。」


 ま、まさかシンのヤツ。あの時焼いたシーデビルの肉の匂いを感じ取ったのか!?潮の香りで消されてると思ったんだがな……。


「む、では何故ヒイラギから、こんなに旨そうな肉の匂いがするのだ?」


 腕を組み、首をかしげながらシンは俺に問いかけた。試しに自分の服の匂いを嗅いでみるが、それらしき匂いはしない。


「そんなに匂いするか?」


「うむ、まぁ我は鼻がいいからな。普通わからない微かな匂いでも感じることができてしまうのだ。」


 シンの嗅覚は犬のように発達しているようだな。手を腰に当て、盛大にドヤ顔をかましている。


「して、その肉の匂いはどうしたのだ?」


「今日の晩御飯までの秘密だ。」


 ドヤ顔をかましているシンに少し意地悪をしたくなったので、肉のことについては晩御飯のときまで秘密にすることにした。

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