子供扱いされるリリン


 リリンとウォータードラゴンが戯れている間に、他の寝ているみんなを起こしていく。


「みんな、ご飯だぞ。早く起きないと……今日という今日はマジでなくなるぞ~?」


 この前は冗談で言ったが、今回は冗談ではすまない。何せ大喰らいの彼女が来てしまったからな。


「んん、ふわぁ…よく寝たわ。…ってあら?なんであなたがここにいるのよ。」


 ぐ~っと大きく背伸びしたランは、ハウスキットの中でリリンと戯れているウォータードラゴンを見つけた。


「あっラン!!久しぶりですねぇ~、ここからいい匂いがしたので、ついつい来ちゃいましたぁ♪」


「いい匂いがしたからって……あなたねぇ~、ワタシ達だったから良いとはいえ、別の人間だったらどうするのよ?」


「そのときは~……そのときです~♪」


「はぁ、相変わらずね。」


 ラン達が話しているところを眺めていると、クイクイッとコックコートの袖が引っ張られた。


「ぱぱ…あれ…だれ?」


「あぁ、あれはなウォータードラゴンだ。」


「どらごん?にんげん…じゃないの?」


「今はスキルで人間の姿になっているだけで、もとの姿はちゃんとしたドラゴンだぞ?」


 彼女は以前、湖で冒険者達を蹴散らしてしまっている。そのため、ドラゴンの姿のままここで暮らしていると、討伐されかねないから現在人間の姿で生活しているのだ。


「どらごん…なのに…にんげん…ふしぎ。」


 メリッサも同じようなものだと思うけどな。今は羽とか触角とか、針とかを体内にしまっているから、人間の少女にしか見えないが……。


「あれぇ!?またまたずいぶんかわいい子がいますねぇ~♪」


 メリッサが話していると、彼女はリリンと戯れるのを止めてこちらに歩いてきた。


「こんばんは♪この子も人間さんのお仲間ですかぁ?」


「ぱぱ!」


「ぱ、パパですかぁ!?も、もしかして……もうランと子作りしたんです!?」


「断じて違う。訳あって、今育て親になっているんだ。……コホン、まぁまぁそんなことよりだな、そろそろ食べる準備しないと、せっかくの温かいご飯が冷めるぞ?」


「そ、それは困ります~!!」


 彼女はパタパタと小走りでテーブル席に向かうと、空いている所に腰かけた。


「ちょっと!!そこ私の席なんだけど!?」


「あらぁ~?そうだったんですねぇ~。でも先に座っちゃいましたしぃ……そうだ!!私の上に座ればいいじゃないですかぁ~♪」


「そんな子供みたいなことできるわけないでしょ!?うぅ、こんなに子供扱いされたのは初めて……屈辱よ。」


 しぶしぶといった感じで、仕方なくリリンは彼女のとなりに座る。

 しかし……。


「そんな恥ずかしがらなくてもいいんですよぉ~?ほらぁ~♪」


「ちょ!!やめなさいよ!!下ろしなさい!!」


「はい、下ろしました♪」


「ここにじゃないわよ!!」


 無惨にもリリンは彼女に抱き上げられ、無理やり彼女の太ももの上に座らせられる。


 うん、やっぱり今のリリンは駄々をこねる子供にしか見えないな。


 彼女の太ももの上で、じたばたと暴れているリリンを見て、思わずそう思ってしまった。

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