期待を裏切らない訪問者


 ピラフを盛り付けている途中で、ハウスキットの扉がコンコン……と優しくノックされた。

 こんな時間に歩き回る人間はいるとは思えないし、多分だろう。


「やっぱり来たかな?」


 最後のピラフを盛り付けてから、扉の方へと向かう。すると、いつの間に起きていたのか、リリンとライラが既に戦闘体勢に入っていた。


「ちょっと!!なに普通に出ようとしてるの!?」


「ん?そんなに警戒しなくても大丈夫だ。多分この向こうにいるのは、知り合いだからな。」


「は…?知り合い?」


「あぁ、人間の知り合いじゃないけどな。」


 なにがなんだかわからない様子のリリンを背に、俺は扉を開けた。


「あっ!!やっぱり人間さんでしたぁ~。」


「久しぶりだな。匂いにでも誘われたか?」


 ドアを開けた先にいたのは、やはり人化したウォータードラゴンだった。


「えへへへ……こんな夜中に、なにやら美味しそうな匂いがして様子を見にきたら、見たことある建物があるじゃないですかぁ~。もしかしてと思ってぇ……来ちゃいましたぁ。」


 苦笑いしながら彼女は言った。


「ま、そんなことだろうと思ったよ。いつ来てもいいように、料理は多めに作ったからな。」


 今回彼女が訪ねてくることを予想して、あらかじめピラフは多めに炊いておいた。もし来なかったら、残った分は明日の道中のおにぎりになる予定だったが……今回は予想的中って感じだな。


「わ、私が来ること予想してたんですねぇ?」


「まぁな、むしろ来ないわけないと思ってたぞ。」


「あ、あはは~……や、やっぱり人間さんにはかなわないです~。」


「ま、中に入ってくれ。夕御飯はもうできてる。」


「それじゃお言葉に甘えてぇ~、おじゃましま~す♪」


 ルンルンと上機嫌でハウスキットの中に入ったウォータードラゴン‥……中に入って辺りを見渡した彼女は、ある異変に気が付いた。


「あれぇ?この子供は、新しいお仲間ですかぁ?」


「子供じゃないわよ!!失礼ね!!これでもれっきとした大人なんだけど?」


 ふん!!……と、無い胸を張って、自身を大人と言い張るリリン。


 しかし……。


「はいは~い、大人ぶってかわいいですねぇ~♪」


 ポンポン……と頭をウォータードラゴンに撫でられ、完全に子供扱いされてしまう。


「ムッキィィ~ッ!!も、もう怒ったわよ!!このっ……こうしてやるわっ!!」


 子供扱いされてムキになったリリンは、ウォータードラゴンに向かって短い腕を振りかぶるが……ウォータードラゴンの長い腕に頭を抑えられ、無惨にもリリンの拳は彼女に届くことはなかった。


 まさにその姿は、大人とは程遠い……駄々をこねる子供のような姿だった。

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