いなり寿司の仕込み


 いつもの広場に来てハウスキットを出現させた。


 中に入って、ロッカールームでコックコートに着替えて厨房へと向かい調理を始める。


「まずは米だな。」


 米を研いで炊飯器にセットする。この時少し水は少なめにする。


「よし、次はすし酢を作るぞ。」


 すし酢の作り方はいたって簡単で、米酢に砂糖と塩を混ぜるだけだ。後はこれを炊き上がったご飯にかけて混ぜる。


 次はご飯が炊き上がる前に油揚げを仕込むか。


 油揚げの仕込みは以前とほとんど変わらない。一つ変わるとすれば、油抜きする前の油揚げを麺棒でゴロゴロと押し潰し、切り込みを入れてご飯を入れられるようにするってところぐらいだ。


「次は汁物。」


 マジックバッグを漁り、きっちりとラップに包まれたジュエルサーモンの頭と中骨を取り出す。


「今日はこれであら汁を作ろう。」


 ジュエルサーモンの頭を半分に割ってよく血を洗う。そして鍋に水をはって酒を入れ、そこにジュエルサーモンのアラを入れて火にかける。

 最初は強火で一気に沸騰させて、出てくる灰汁をすべて取り除いたら火を落とし、味噌で味を整えて……。


「うん、いい出汁が出てる。塩加減もこのぐらいでいいな。」


 あら汁のあじみをしていると、ご飯が炊き上がる音がする。


「いいタイミングだ。」


 木でできたシャリ切り専用の桶に炊きあがったご飯を出す。


「後は上からすし酢をかけながら米を切るように混ぜる。」


 米を潰さないように、しゃもじで切るように混ぜる。油揚げにも水分が多く含まれているので、すし酢はあまり多くかけなくていい。

 米全体にすし酢を回せたら、甘く煮付けた油揚げの中に詰めて成形する。


「みんなたくさん食べるもんな。多めに仕込んでおこう。」


 特にミクモは要注意だ。めちゃめちゃ多めに作っておこう。

 せっせと油揚げの中に米を入れて形を整えること数分後……目の前にいなり寿司の山が完成した。


「さすがにこんだけあれば足りるだろ。」


 もし足りなかったら……作るしかない。


「よし、それじゃレイラにみんなを呼んできてもらうか。」


 コックコートを脱ぎ、店の前で待っていたレイラに声をかけた。

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