見出された希望と絶望
「いや~まさかこんなことになるなんて思いもしなかったよね~。」
「まったくもう、お気楽なんですから……。」
少し元気を取り戻し、乾いた笑いを浮かべるアルにイリスはため息混じりにぼやいた。そんなアルとふと視線が合うと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「そういえばそこの人は誰?男の神なんていたっけ?」
「この人は私がこの世界に転生させた転生者のヒイラギさんです。」
「なるほどね、どうりで神気を感じるわけだぁ~。」
そしてアルは俺の方に近寄ってきて、おもむろに顔を両手で鷲掴みにしてくると、瞳をじ~っと覗き込んできた。
(か、顔が近い…きょ、距離感が……。)
困惑する俺を他所に、アルはクスリと笑う。
「ふぅん、イリスも面白い人を見つけるね~。」
「す、すまないが満足したら離れてくれると助かる。」
「え~?なんで~?別にいいじゃ~ん?減るもんじゃ無いんだし~、もっと見せてよ~。」
(い、イリス……見てないで助けてほしいんだが。)
チラッとイリスの方に視線を向けると……。
「だ~め!!視線…そらさないの。あともうちょっとなんだから我慢…我慢~。」
「う……わ、わかった。」
イリスもただ眺めているだけで、助けてくれる気配もないし観念するしかない。
そして数分後……。
「はい、いいよ~。」
ようやく解放の時が訪れた。早鐘をうっていた心臓が少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「アル、何か見えましたか?」
「うん。でも完全に力が戻ってないから、かなり不確定な未来だけどねぇ~。」
「まさか未来を見ていたのか?」
「ん~?そうだよ~。」
にへらとアルは笑う。
(さすがは女神というべきか…とんでもない力だな。)
「何が見えたのか教えてくれますか?」
「うん。見えた未来は二つ~。一つは君がみんなと喜びを分かち合っている未来。二つ目は~…
「つまりどっちに転んでもおかしくないってことか。」
「そういうこと~。」
どちらに転んでもおかしくない……つまり少しは勝機があるってことだな。勝てる確率が少しでもあるなら俺はそれでいい。
「なるほどな、少し希望が持てたよ。」
「えっ!?もしかしたら滅びの未来になるかもしれないのに~?」
「滅びない未来になる可能性もあるんだろ?ならそれで充分だ。」
俺の言葉に呆気にとられるアル。
「ふふっ♪ヒイラギさんはこういう方なんですよ。面白い方でしょう?」
「……おかしな人間。普通なら絶望してもおかしくないのに~。」
「絶望してしまったら、もう希望を抱くことなんて無理だからな。こういう時は微かでも希望を信じていた方が活力になる。」
一度絶望してしまったらそこから希望を見出だすのは難しい。だからどんな状況でも俺は絶望はしない。
「それよりもだ。俺のことよりも、まず自分の心配をしないといけないんじゃないのか?」
「そうだね~、どうしよっか?人間く~ん、考えて~。」
なんか、このアルという女神はどこかイリスのような雰囲気を醸し出している。もしかしたらこの女神も……。
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