女神アル
みんなが協力して動いてくれたおかげで、あっという間に教会の中は綺麗になった。カビが生えていた木製品は、今漂白剤を吹き掛けて天日干ししている。
これで後で漂白剤を洗い流してやればカビが落ちるはずだ。
「ふぅ……みんなお疲れ様。」
「おかげでだいぶきれいになりました。私からもお礼を言わせてもらいます、ありがとうございます。」
外側は全く手を付けていないためボロボロに見えてしまうが、中はかなり綺麗になった。
「この教会ってこんなにきれいだったんだねぇ。」
「ちょっとほっといただけでこんなになっちゃうなんて驚きよ~。」
後はシンにこのことを話して、月に一度でもいいから掃除してもらえるように頼んでおくか。またこうして廃れてしまったら元も子もないからな。
「それじゃあさっそくみんなでお祈りをしましょうか。」
「そうだな。」
そして女神像に向かって祈りを捧げると、いつものごとく意識が吸い込まれる感覚に襲われた。
目を開けると……。
「これは……。」
「思っていたより事態は深刻なようですね。」
目の前に広がっていた光景はイリスたちの時とはわけが違った。辺りの草花は枯れ果て、緑の光景などどこにもない。そして積もった枯葉の上に一人の女性が横たわっていた。
「アル!!大丈夫ですか!?」
その女性のもとへとイリスが駆け寄っていった。そして抱き起し必死に名前を呼んでいると…。
「う……い、イリス?なんでここに?」
「あなたを助けるために来たんです!!ほら早く口を開けてください!!」
「ちょ、まっ……むぐっ!?」
制止の言葉も聞かずイリスは、彼女の口に神華樹の果実を突っ込んだ。
「んぐ~!!」
アルという女神はじたばたと暴れるが、そんな事お構いなしにイリスは彼女の口に押し込み続ける。ちょっと焦りすぎではないだろうか。
「イリス、ひとまず落ち着け。今のままじゃ彼女をイリスが殺してしまうぞ。」
「えっ!?ハッ!!あ、アル?大丈夫?」
「ぷはっ!!し、死ぬかと思ったぁ。」
なんとか窒息は免れたらしい。止めなかったら危なかったな。
「アル、ひとまずこれを食べてください。」
「これって神華樹の実じゃん。まだあったんだ。」
そしてアルという女神は受け取った神華樹の実を少しずつ食べ始めた。
「はぁ、神気が体に入ってくる……なんとか持ち直せそ。」
「心配したんですよ!?こっちから連絡しても返事がないから…。」
「いや~返事を返す力もなくて。」
「もう、危なくなったらちゃんと連絡してください!!」
「ゴメンゴメン…気を付ける。」
アルという女神は少し元気を取り戻したようだ。ひと安心といったところだな。後はどうやって彼女を再び信仰の対象にするか考えないといけない。
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