ボロボロの教会


 イリスの後ろをひたすらについていくと、だいぶ外れの方まで歩いてきてしまっていた。こんなところに何があるというのだろうか。


「なぁイリス、どこへ向かってるんだ?」


「もうじき見えてきますよ……ほらあそこに見えませんか?」


 イリスが指差した方向に目を向けると、そこにはボロボロになった教会があった。教会の周りは雑草が伸び放題になってしまっている。手入れすらろくにされていないようだ。


「教会?」


「はい、獣人族は人間と共存していた頃は女神……つまり私たちを信仰してくれていたんですが、人間と決別してからというものの、だんだん信仰が薄れ次第に廃れていってしまったんです。」


 信仰が薄れ廃れていく……良くあることだな。


「ここにもまだ女神がいるのか?」


「えぇ、だいぶ弱っちゃってますけどね。まだ………。」


「女神が弱るっていうのは…あれか?信仰がないとどんどん衰弱していくのか?」


「そういう認識で間違いないです。私達は信仰の力を神気に変えて存在を保っています。なので信仰を集めるために、何年かに一度ぐらいの間隔で奇跡を起こしたりしてはいるのですが……ここにいる子はもう奇跡を起こす力も残ってないようなんです。」


 女神もなかなか苦労しているようだ。どっかの一人を除いて……。


「俺達をここにつれてきたということは、何かその女神を救う策があるってことなんだろ?」


「そういうことです。取りあえず教会の中に入りましょうか。話はそれからです。」


「わかった。」


 雑草はシアの背丈ほどもあるのでシアを肩車して、雑草を掻き分けながら進んだ。そして入り口の大きな扉を押し開けた。

 ギギギ…と金具が錆び付いているのか、嫌な音を立てて扉が開いていく。


「ゴホッゴホッ!!凄いホコリだな。」


 扉を開けたときに中に風が入り、床に積もっていたホコリが舞い上がり思わず咳き込んでしまった。


「それにカビ臭いわね。」


 ランが鼻をつまんで、手で舞い上がったホコリを払いながらそうぼやいた。湿気がこもっていたから木製品がカビ始めているんだろう。


「それではまず掃除から始めましょうか。このままでは祈りすらも捧げられませんからね。」


「わかった。」


 そしてボロボロの教会の大掃除が幕を開けた。

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