人間とエルフの過去

 

「そもそもお主、エルフがどんな人種か知っておるか?」


「外見的にしかわからないな、耳がとがっていたりとか……あと世界樹を育てているってことは知ってる。」


 外見は前にイリスに見せてもらったからな。世界樹を育てているっていうのはバフォメットに聞いた。

 俺の知っている情報はそれぐらいだ。


「そうじゃな、そこがわかっておるのであれば話が早い。まずエルフは世界樹を信仰しておってな。」


「世界樹を信仰?」


「うむ、世界樹はエルフの象徴と言われるものらしく、妾は実際に見たことは無いのじゃが……なにやら傷を癒す効果があるらしくての、エルフはそれを神の御業と崇め称えておるのじゃ。」


 エルフというのは結構宗教的な種族らしいな。


「それだけ宗教的だということは、意外と大人しい種族なのかな?」


「そんなことは無いぞ?あやつらはそれこそ世界樹を侮辱する者たちには容赦はせん。現に共存しておったころ、何人もの世界樹を狙う盗人めを返り討ちにしておったからのぉ。」


 過激な方だったか……。でもこちらが世界樹に手を出さなければ、何もしてこないんだろうなきっと。


「ちなみにエルフが人間と交流を絶ったのにはもうひとつ訳があってな。」


「もうひとつ?」


「うむ、それがその世界樹が原因なのじゃ。」


「なんだ?世界樹をめぐってエルフと揉めたのか?」


「揉めたというよりもあと一歩で戦争じゃったな。」


 戦争にまで発展しそうになる程人は世界樹が欲しかったのか?もともとエルフのものだった世界樹すらも奪おうとするなんて…流石に貪欲すぎる気がするな。


「さっき世界樹が原因って言ってたが…。」


「うむ、人間の国王が世界樹の果実についてある噂を聞いたらしくての。」


「果実?」


「そうじゃ。その噂というのが、世界樹の果実を食べるとになるというなんとも信じられぬ噂じゃった。」


 不老不死……人類の夢だな。当時の国王はその噂を信じて、世界樹を我が物にしようとしたって感じだろうな。


「そのあとのことはだいたい想像はついたよ。」


「うむ、今お主が考えておる通りで間違いなかろう。」


 これはエルフとの交流も難しそうだ。隷属化だけでは飽きたらず、エルフを象徴する世界樹まで奪おうとした人間をエルフはさぞかし憎んでいるだろう。


 ファーストコンタクトはどうとったらいいだろうか……。シアのようにばったり出くわすなんて出来事は、まずないだろうしなぁ。


 過去に人間のした事に半ば呆れながら、これから直面するであろう事態に頭を悩ませるのだった。

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