虎の尾を踏むべからず
時は少し遡りマジックバッグの中にて……。
「シア…大丈夫かしらね。」
「ミクモはミストゴートは襲いかかることはまずない…と言っていたから大丈夫だとは思うが。」
「それでも相手は魔物だからねぇ~。万が一って事もあるかもしれないよ。」
はたから見れば完全に保護者の会だ。バッグの中に入ってからずっとこんな感じで、シアの身に危険が及ばないかを危惧していた。
「もし危険を感じたらすぐに呼んでくれとシアには言ってあるから、その時は……。」
「わかってるわ。」
「即シアを保護だね。」
袴の素材なんぞ二の次だ。シアの安全より優先すべきことはないからな。
三人で話し合っているとバッグの外からシアの声と特徴的な鳴き声が聞こえ始めた。
「どうやら上手く誘い出されたらしいな。」
「後はこの中に引きずり込んでくれれば作戦成功ね。」
シアに話した作戦はとても簡単で、三日月草を食べさせながらミストゴートを撫でて、親しくなった瞬間にこの中に引きずり込むという作戦だ。
みんなでシアの無事と作戦の成功を祈っていると、急にシアの声がボソボソと聞こえづらくなった。
そして次の瞬間……。
「ッ!?な、なんだ!!」
バシィィィン!!という轟音がバッグの中に鳴り響いた。
「二人とも行くぞ!!」
何かあったのは間違いない。
二人と共に急いでバッグを飛び出した。
「シアっ!!無事か!!」
バッグから飛び出してシアの名前を呼ぶ。するとすぐにシアの返事が聞こえた。
「お兄しゃあぁぁん!!」
「よかった。無事だったんだな。」
ギュッと俺の腰に目に涙を浮かべながら抱きついてくるシア。
「すまない……怖かったろ?」
シアの頭を撫でながら謝った。やはりこんな危険なことをさせるんじゃなかった。
「ううん……大丈夫。でもお兄さんにもらったお洋服が……。」
「服?あ~、破けちゃってるな。」
シアが大事そうにギュッと握りしめていたのは、無惨にも破けてしまっている、以前買ってあげた服だった。
「もしかすると、ミクモなら直してくれるかもしれないぞ?」
「ホント!?」
「あぁ、取りあえず今はこっちの服を着て体を冷やさないようにな?」
「うん!!」
替えの服をシアに手渡して着替えてもらった。最近寒くなり始めたからな、風邪を引かれては困るのだ。
「それで、山羊はもう逃げちゃったか?」
「ううん、あそこにいるよ!!」
そしてシアが指差した先には、草原の中にできた異様な程大きなクレーターの真ん中に、頭から一頭の白い山羊が突き刺さっていた。
おぉぅ……さっきの轟音の正体はこれだったのか。
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