瞬間移動で捕まえた


「それじゃ俺はみんなを呼んでくるよ。イリスは座って休んでてくれ。」


「わかりました。」


 コックコートをハンガーにかけてハウスキットの外へ出ると…。


「お疲れ様でございます。」


 やはりレイラがいた。くしゃみはもう治まったようだ。


「先程使いの者を皆様のもとへ向かわせました。すぐにここにいらっしゃると思います。」


 この手際のよさには毎度驚かされるな。


「わかった。それじゃここで待ってるよ。」


 ライラと共にハウスキットの前でみんなの到着を待っていると、不意に後ろから抱きつかれた。


「お兄さんつかまえた!!」


「ッ!?し、シアか?」


 今のは本気で驚いた。何せ抱きつかれるまで気配もなく、音も無かったからな。完全に虚を突かれてしまった。


「どうやって一人でここに来たんだ?」


「ん~と、お兄さんに会いた~い!!って思ったらここにいたの。」


 多分シアが使える瞬間移動のスキルなんだろうな。これもコントロール出来るようになってきたのかな?

 シアの頭を撫でていると、王宮の方から他のみんなが歩いてきた。


「あ、やっぱりここにいたわね~。」


「シアちゃんズルいよ~、ボクそんな便利なスキル持ってないのに~。」


「えへへぇ~♪今日もシアの勝ち~。」


 一気に賑やかになったな。シアとフレイはもう打ち解けたようで、友達みたいになってる。精神年齢が近いから絡みやすいのだろう。


 そしてすっかり乾いて、ふさふさのたてがみをなびかせながら、上機嫌なシンがこちらに歩み寄ってきた。


「ムフフフ、ヒイラギよ、今日も例のこらーげんの料理なのだろう?」


「あぁ、そうだ。」


「そのこらーげんって昨日のやつよね?あれのおかげかわからないけれど、私達の羽に艶が出たのよね~。」


 そう言ってリリンは背中に生えている蝙蝠のような羽を広げて見せてきた。


「あっ!!ボクのも見て!!」


 二人の羽をまじまじと見てみると、確かに昨日よりも少し艶が増した…ような気もする。


「ど、どうかな?」


「うん、効果は出てると思うぞ?」


「ほ、本当!?もっと食べればもっと綺麗になるかな?」


「フレイ?今日は食べ過ぎちゃダメよ?昨日吸血してないんだからね?」


 リリンは目を輝かせているフレイにそう言った。まぁ本来リリン達は本当はそっちがメインだからな。


「うっ…わ、わかってるよ。」


 フレイは渋々といった感じでリリンの言葉に頷いた。


「さぁ、そろそろ中に入って食べる準備をしよう。」


 いざ鍋を見た皆はどんな反応をするかな?楽しみだな。

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