シンの身に起きた変化


 王宮へと戻ると、レイラに直ぐに風呂に入るよう言われてしまった。サラマンダーとの戦いで全身に火山灰を浴びてしまったため、体が汚れていたようだ。


 脱衣場で服を脱ぐと、素肌に火山灰が付着していた。服の中にまで入ってきていたか…。


 服を全て脱ぎ終わると脱衣場から大浴場へと続く扉がガラガラと開いた。


「む?ヒイラギではないか随分汚れておるな。」


「あぁ、ちょっと火山地帯に行って来たから、火山灰を被ってしまった。」


 タオルでたてがみの水気を拭き取りながらシンが風呂から上がってきた。心なしか、少したてがみが昨日よりツヤツヤしている気がする。


「火山地帯だと!?よく無事に帰ってこれたな、あそこにはまだサラマンダーが住み着いていたはずだが…。」


「そのサラマンダーを討伐しに行ったんだよ。」


 軽くシンにそう言い放つと、ポカン…としたというか最早呆れに近い表情をされた。


「それで今ここに無傷のヒイラギがおるということは…。」


「あぁきっちり討伐してきたぞ。3日後にはヤツの肉が食えるらしいから、楽しみにしててくれ。」


 せっかくだからシンにも食べてもらおう。どうせ俺達だけでは食べきれない。


「……念のため聞いておくが、もしやただ美味いからという理由でサラマンダーを討伐しに行ったのか?」


「それ以外に俺がサラマンダーを討伐する理由がないだろ?」


「う、うむ…野暮な質問だったな。そうだヒイラギよ、これを見てくれ!!」


 そう言ってシンは自身の立派なたてがみを俺に見るよう促した。今は濡れてしっとりとしているが、乾いているときはフサフサしてるんだろうな…後で触らせてくれないかな?


「どうだ?昨日より綺麗になったとは思わぬか?これもとやらの力なのだろう?」


「確かに昨日よりツヤツヤしてると思う……。」


「フフフ、やはりそうか。とは素晴らしいものだ。」


「今日も多分コラーゲンが入ってる料理を作るんだが、一緒に食べるか?」


「無論だ!!そうと決まればさっさと身支度を整えるとしよう。ではまたあとで会おうぞ!!」


 そしてシンは凄まじい速度で着替えを済ませると、脱衣場を出ていった。


「シン様!!危ないですから、走らないでください!!」


「む、むぅレイラ…すまなかった。」


 すると、レイラの注意する声とシンが謝る声が外から聞こえた。やはりシンはメイドには弱いらしいな。

 注意されてしょぼん…とするシンを想像して思わず笑みがこぼれてしまった。


「さてじゃあ俺も風呂を頂こうかな。」

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