解体師


 ジルに案内され、店の裏手へと来ていた。


「こちらが私共の解体場でございます。」


 店の裏手には巨大な魔物でも乗せられるであろう大きなまな板のようなものと、解体に使うノコギリ等も並べられていた。


「そして彼等がこの国を代表する解体師です。」


 ジルが指差した方向には三人の獣人がいた。その内の一人がこちらに向かって歩いてくる。片眼に大きな切り傷の痕がある熊の獣人だ。


「今回ジルさんに解体を依頼されたグリズだ。サラマンダーの解体は初めてだが、精一杯やらせてもらう。」


「ヒイラギだ。大変だとは思うがよろしく頼む。」


 お互いに自己紹介を済ませ、ガシッとグリズと握手を交わした。熊だからだろうか、グリズの手にはぷにぷにの肉球があった。


「後ろの二人はオレの弟子だ。まだ未熟ではあるがその辺の解体師より腕は良い。」


 なるほど、後ろの二人はお弟子さんだったのか。チラッと目を向けるとその二人はこちらにペコリとお辞儀をした。


「さっそくだが例の魔物を見せてもらえないか?デカさによって解体にかかる時間も変わってくる。」


「わかった、そこの板の上に出せば良いのか?」


「おう!!」


 マジックバッグに両手を突っ込み、未だに冷たいサラマンダーの氷像を取り出してドン!!と板の上に乗せた。

 とてつもなく重い代物のため、置いた瞬間地面が少しグラグラと揺れた。


「これなんだが…。」


 ジル達の方に向き直ると、みんな口をあんぐりと開けて、大きく目を見開き固まっていた。流石にこの大きさと迫力には驚いたらしいな。


 ランがこちらを見てニッコリと笑っている。予想通りの反応で嬉しいのだろう。


「「「「…………っ。」」」」


「あ~、驚いているところ悪いんだが、どうなんだ?」


 声をかけるとハッと我に返ったらしい。


「な、なぁジルさん…さっき見せてもらったサラマンダーの数倍でかく見えるんだが。」


「え、えぇ…それに少し容姿が違いますね。」


 我に返った二人は、剥製になっていたあの子供のサラマンダーと、この大人のサラマンダーを比べているようだ。


「一応補足しておくが…あの展示されているサラマンダーは子供で、こっちがその親だ。」


「な、なるほど。」


 さて、解体にどれぐらい時間がかかるかな?できれば早く食べたい。


 未だに現実を受け入れきれてない彼らを他所に、一人サラマンダーの味が気になって仕方がないヒイラギだった。

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