不細工な魚ほど美味い説
青果エリアを抜けて鮮魚エリアへと俺達は足を運んでいた。先ほどとはまた違い、魚の独特な匂いの漂うこの場所にランがぽつりと言葉をこぼした。
「ここはあれね、やっぱり生のお魚の匂いが凄いわね。」
「そりゃあ鮮魚を扱ってる場所だからな。」
並べてある魚を眺めながら、魚屋がひしめいている通りを歩いていると…。
「見て見てヒイラギ!!面白い顔の魚がいるわ!!」
はしゃぎながらランが指差していた魚は、まるでアンコウのような顔つきの魚だった。ご丁寧にちゃんと提灯も頭についている。
(お前もこの世界にいたのか。)
心の中で一つツッコミを入れながらも、俺はランにとある持論を説いた。
「意外とこういう面白い顔つきの魚って美味しいんだぞ?」
「えっ!?ホントに~?」
いまいちランは信じられなさそうな感じだが、顔が不細工という事で敬遠されがちな魚は、いざ食べてみると意外と美味しかったりするのだ。
「多分こいつにもコラーゲンがたっぷり入ってるだろうな。」
この魚のプルプルしている感じを見るに、おそらく皮の下にはコラーゲンの層があるに違いない。
「こんなに不細工なのに!?」
はっきり不細工って言ったな。ほら、ちゃんとよくよく見れば可愛く見えて……うん、来ないな。
「せっかくだから今日はアンコウ鍋でもするか。すまない、この魚をくれないか?」
魚屋の店員にアンコウのような魚を指さしてお願いすると、威勢の良い声で答えてくれた。
「あいよぉ!!勇者様もなかなかいい目を持ってるな!!こいつはこんな顔だが、ま~たうまいんだよ。」
やっぱりな。異世界でも
「ちなみに、こいつの名前は何て言うんだ?」
「あぁそいつは
アンゴロウ…ね。なんかまんまだな。
確かアンコウはもともと
そんなうんちくを思い出しながら、俺は気になっていたことをランに問いかけてみることにした。
「そういえば昨日コラーゲン食べて体に変化はあったか?」
「鱗にちょっと艶が出た…気がするわ!!」
気がするのね…。まぁコラーゲンを摂取してもホントに効果が現れるかは、人それぞれだからな。肉由来のコラーゲンを摂取しても何も効果がなかったのに、魚由来のコラーゲンを摂取したら効果が出た…とか色々あるらしい。
「今日もい~っぱい食べるわよ~。食べるだけで綺麗になれるってホントお得よね。」
「はは、今日も夕飯は戦争になりそうだな。」
また今日もコラーゲンをめぐって女性陣の間で戦争が起きるだろうな。しかも今回は数に限りがあるから…苛烈になりそうだ。
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