朝風呂
兵士たちに構えを取らせてから、しばらくすると予想通りの光景が目の前に広がっていた。
「うん、まぁ予想はしてたが誰も構えを維持できてないな。」
一時間程ずっと構えをとらせた兵士達は、今はもう構えが崩れてしまっている者もいれば、構えをとることもままならない者までいた。
「まさかたったこれだけの事でオレの部下達がこのザマとは…。」
そうベルグは頭を抱えて言った。確かに端から見れば構えをとってじっとしているだけだが、やっている本人達にかかっている負担は尋常ではない。
それこそ最初の10分はなにも感じないが、時間が経つにつれ構えている腕は鉄のごとく重くなり始めるのだ。
「まぁそう言うな、ベルグもやってみればわかると思うぞ?」
「そんなにツラいのか?」
ベルグはいまいち信じられなさそうな感じだが、まぁこればっかりはやってみなくちゃわからないものだ。
「毎日これをやってれば自然に構えられるようになる。次に進むのはそれからだ。」
「おう、わかったぜ。」
「じゃ、俺はそろそろ戻らせてもらうぞ?」
シンとベルグに挨拶をしてから訓練所を後にした。外へ出るとレイラが待っていた。
「お疲れ様でございます。お風呂が沸いておりますので、良ければ汗をお流しになってはいかがでしょうか?」
流石メイド、今欲しいものがわかっている。それじゃあせっかくだし、いただこうかな。
「ありがとう。じゃあ案内してもらってもいいか?」
「かしこまりました。こちらです。」
再びレイラに案内され王宮へ戻ると、大浴場へと向かった。
「ヒイラギ様、こちらでございます。」
「うん、ありがとう。じゃあちょっと浴びてくるよ。」
「ごゆっくりお楽しみください。」
中へ入り服を脱ぎ、大浴場へと続く横開きの扉をガラガラと開けた。 その瞬間にモワッとした暖かい空気が俺を迎え入れてくれた。
「朝風呂なんていつぶりかな。」
少なくとも成人して仕事に就いてからは入ってないな。何せ仕事をしていたころは、朝6時出勤の24時帰りだった。朝にそんな悠長なことをしている暇なんてなかったのだ。
日本での生活を思い出しながら体を洗い、湯気がたっている風呂に体を沈めた。
「あ゛ぁ~……染みる。」
なんとも爺くさいと思われるかもしれないが、風呂に入るとどうしてもこの声が漏れてしまうのだ。
誰もいないのをいいことに鼻唄を歌いながら俺は朝風呂を楽しんだ。
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