戦果報告
ノックされた扉を開けると……。
「む、邪魔したか?」
「いや、大丈夫だ。ちょうど良い時に来たよ。」
「そうか、そろそろ戦果報告の時間なのだが…準備の方は良いか?」
「まぁ、大丈夫だと思う。みんなは大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫よ。」
「アタイも大丈夫。」
二人はもう準備万端らしい。シアは……まだぐっすりだな。流石に沢山の獣人族の前に連れて行くのは気が引けるし、このままぐっすり眠っていてもらおう。
ただ、見張りはつけておかないとな。
「グレイス~、隠れてないで出てきてくれ。」
と、家具の物陰にずっと隠れていたグレイスに声をかける。そしてヒョコッと顔を出したグレイスに歩み寄った。
「さっきのことは怒ってないから安心しろ。それより俺達が戻るまでシアを見張っててくれないか?」
「りょ、了解っす!!シアちゃんは自分が見張っとくんで安心してくださいっす!!」
「頼んだぞ。」
ビシッと敬礼するグレイスを背に、俺達はシンに続いて部屋を後にした。
そして王宮の中を進み大きなバルコニーのあるところまでやって来た。外からはざわざわと人が話す声が聞こえるため、もうすでにたくさんの人が集まっているに違いない。
「いつも民に話があるときに使う場所だ。なかなか広いだろう?」
「そうだな。」
この広さなら全員横に並んでもあまりあるだろう。つまり横に並んで立てば、どこからでもこちらの姿が見えるということになる。
(ヤバい…緊張してきた。)
大きく息を吸って、緊張を紛らわすべく深呼吸していると、その姿がシンの目に入ってしまい、フッと笑われてしまった。
「フッ、何も緊張せずともよい。民の前で少し話すだけだ。」
「そうは言ってもな、これだけ多くの人の前に出るのは緊張するもんだぞ。」
「そうか、我はすぐに慣れたのだが……。まぁいい、あまり民を待たせるのも悪いからな。」
そしてシンを筆頭にバルコニーに出た。すると、大きな歓声が俺達を出迎えた。
歓声が収まるのを待ってシンが話し始めた。
「皆よ、今日集まってくれたことに礼を言う。さて、もう耳に挟んでいる者もいるとは思うが、改めてここで宣言させてもらおう。」
シンは大きく息を吸い込んで大声で言った。
「我らは敵の軍勢を退け大勝した!!」
その言葉に再び大きな歓声が上がる。先ほどよりも大きな歓声……まるで王宮が揺れているかのようだ。
「うむ、そして今回の戦いにおいて種族関係に大きな革命を起こす出来事が起こったのだ!!」
その言葉に歓声を上げていた人達は静まり返った。
さて、彼らをどう説得するのか見せてもらおうかシン。
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