ヒイラギの失敗
先程まで果物を食べていたシアに目を向けると、表情が、少し落ち着いてきているようだった。
「しかし、文献でしか読んだことがなかったがホントにマタタビは効くんだな。」
知識としてはマタタビが猫にとって強いお酒のようなものだということは知っていた。だが、実際に猫がそんな風になるのは見たことがなかったので信じられずにいたのだ。
「シアのさっきの反応を見た限りでは信じるしかないな。」
マタタビはシアが二十歳になったら食べさせてあげよう。日本でも酒は二十歳からだったからな。流石にこの年で泥酔状態にさせるわけにはいかないだろう。
「落ち着いたかい?」
「うん!!」
「さっきのあれはシアが大人になったら食べような?」
「……??どうして〜?」
「大人にならないと美味しくないからだよ。美味しくないもの食べたくないだろ?」
「わかったぁ、シア我慢する!!」
素直なシアの頭をポンポンと
するとシアにまた異変が起きた。
「……?スンスン、スンスン……。」
しきりに鼻をならして匂いを嗅ぎ始め、不意にガシッと俺の右手を掴んだ。
そう、先程までマタタビを持っていた手を……。
「お兄さんのおてて……いい匂い。」
「ッ!?しまっ……手に付着した僅かな香りでもダメなのか!?」
手を必死に抜こうとするが、まるで万力で挟まれているかの如くびくともしない。流石にここまでしっかり捕まれていたら、振りほどくのはステータス的に無理だ。
「えへへぇ~、いただきま~す♪」
「ちょッ!?シア、落ち着いてくれッ!?グレイスも見てないで助けてくれ!!」
「りょ、了解っす!!」
そしてグレイスはシアの顔の間に立ちふさがった。
「し、シアちゃん落ち着くっすよ~。」
「ふにぃ~、グレイスぅ~シアの邪魔するの?」
不機嫌な顔でグレイスを見たシアは、指パッチンをするような構えをとった。
そしてパチンと指を弾くと、オレンジ色の火花が飛び散った。その火花はシアの指の上に再び集まり、1つの球体を作り上げた。
球体は野球ボール程の大きさだが、とてつもない力を感じる。
「グレイス~、そこどいて?」
と、シアはにっこり笑いながらグレイスに言った。
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