最高戦力シア……始動?


 表情を引きつらせているバフォメットの目の前で、楽しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねるシア。するとバフォメットは俺に助けを求めるように視線を向けてきた。


 一度シアの力を確かめてみるいい機会ではあるが……下手したらバフォメットが消し飛ばされかねない。


 俺はシアの頭に手を置くと、ゆっくりと撫でながら言う。


「シア、この羊さんはついさっき俺と戦ったばっかりで疲れちゃってるらしいんだ。」


「じゃあ遊べない?」


「うむ、すまぬな獣人族の娘よ。」


「う~、じゃあじゃあっ今度来たら一番最初にシアと遊ぼっ!!約束っ!!」


「む、むぅ……わかった。」


 シアの言葉を断れず、バフォメットは頷いた。


「えへへぇ~、約束だからね。」


 バフォメットと約束を結んだシアは、うれしそうにしながら俺の腰に抱き着いてきた。それと同時に腰の骨がミシミシと悲鳴を上げる。


「うっ…し、シアは今度一緒に力の使い方を……覚えような。」


「ん~?よくわからないけど分かった!!」


 そしてシアはドーナたちのところに走っていく。


 すると、バフォメットが額から一つ冷や汗を流しながら話しかけてくる。


「ヒイラギよ、頼むぞ。我と手を合わせる前にあの娘には力の扱い方を教えてやってくれ。」


「わかってる。ただ……力の扱い方を教えたとしても、たぶん未来はあんまり変わらないかもな。」


「我もあの娘の攻撃を一撃でも耐えられるように鍛錬せねばならんな。」


「シアは俺の10倍以上のステータスだ、気をつけろよ?」


「む、むぅ……鍛錬でどうにかなるものだろうか。我も少々不安になってきた。」


 そんなやり取りをバフォメットと交わしている間に、ドーナたちの体力も回復したらしい。ではそろそろダンジョンから出るとしようか。


「さて、それじゃそろそろ俺たちは行くよ。」


「楽しき時間というのは一瞬で過ぎ去ってしまうものだな。もう行ってしまうのか。」


「あぁ、明日には獣人族の国に行かないといけない。そのための準備も整えないといけないからな。」


「そうか、では我から一つ助言をしておこう。獣人族は基本的に力のない者には従わん。もし話を聞いてほしければ自分の力を見せつけることだ。」


「なるほど、実力至上主義……って感じか。覚えておく。それじゃあまた来るよ。」


 バフォメットに別れを告げて、ダンジョンの入り口に通じる扉に入るのだった。

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