腹ペコイリス
さらっととんでもない爆弾を投下したイリス。直後俺はドーナとランの二人に詰め寄られた。
「ヒイラギ?これはいったいどういうことかしら?」
「いや、あのだな。その人は間違いなくこの世界の女神なんだ。」
「イリス……アタイの街で祀ってた女神様の名前と全く同じではあるけど、ちょっと信じがたいねぇ。」
「ふふっ♪信じられないのも無理はありませんね。ヒイラギさんから何も聞いていないのでしょう?」
「聞くって何を?」
「この世界へとヒイラギさんのことを招いたのは……何を隠そうこの私なんですよ。」
イリスのその言葉に、ドーナとランの二人は思わず固まった。
「……その物言いだと、ヒイラギがまるでこの世界の人間じゃないみたいじゃないかい?」
核心をついたドーナの言葉。それに対してイリスは一つ大きく頷いた。
「その通りです。もともとヒイラギさんは、別世界の人間でした。」
「そ、そうなの?ヒイラギ?」
「あぁ、イリスの説明に間違いはない。俺はこことは別の世界で一度死んだ……その俺をこの世界に転生させてくれたのが彼女なんだ。」
「ほぇ〜……そんなことホントにあるのね。」
「……疑わないのか?」
「まぁ、ヒイラギがここにいるってことが何よりの証明になってるじゃないかい?」
「ね?別にワタシ達にとってはヒイラギはヒイラギだし。」
そう二人が口々に言うと、イリスがこちらを向いてニコリと笑う。
「ふふっ♪良い方達に恵まれましたね。」
「あぁ、全くだ。」
彼女の言葉に頷いていると、イリスは妖精サイズから等身大サイズへと体の大きさを変えた。すると、こちらに構わず親子丼を頬張っていたグレイスの方に歩み寄っていく。
「な、なんすか?」
「なにやらとても美味しそうなものを食べているなぁ〜…と思いまして。」
「あ、あげないっすよ!!これは自分のっす!!」
グレイスは必死に自分の親子丼を匿う。
そしてイリスは親子丼をちょんちょんと指差すと、俺へと向かってあるお願いをしてきた。
「ヒイラギさん、私もみなさんが食べていたものを食べたいです。いいですかっ!?」
少し興奮した様子でお願いしてきたイリス。女神ともあろう存在が、今にも口元からよだれを垂らしそうになっている。
「……まさか、突然ここに姿を現したのはそれが目的か?」
「さぁどうでしょうか?作ってくれたら教えても良いですよ?」
「はぁ〜、わかった。作ってくるよ。」
そして厨房へと向かおうとすると、クイッと服の裾を誰かに引っ張られた。
「ん?シア?」
「お兄さん、シアおかわりほしいの!」
「わかった。じゃあ新しく作ってくるからな。」
「自分も欲しいっす!!」
「あ、ワタシもワタシも〜。」
「アタイもお願いしてもいいかい?」
「はいよ、ちょっとだけ時間もらうぞ。」
こうしてまた一人……食卓を囲む人物が増えたのだった。
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