夕食の準備①
すっかり外の陽が落ちたころ、俺の膝枕の上で眠っていたシアが目を覚ます。
「んにゃ……あ!!」
「おはようシア。」
「お兄さんおはよう!!……お外暗くなっちゃった。」
外が暗くなってしまっていることにシアは気が付いた。
「あぁ、でもちょうどいい時間に起きたぞ?そろそろ夕飯時だ。」
「ごはん!!」
飛び上がったシアのお腹から、きゅるる~と可愛らしいお腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。
「あ……。」
「うんうん、お腹がすくってことは元気な証拠だ。さぁ、ご飯を作ろう。」
「シアも手伝っていい?」
「もちろん。ドーナたちも今着替えに行ってるから、行っておいで。」
「うん!!」
そしてみんなで厨房に集まると、俺は今日の役割分担をみんなに言い渡していく。
「今日はドーナとランには二人で野菜を切ってもらう。俺とシアは調味料を計ったり、米を炊く。」
「わかったわ~。」
「それで、何を切ればいいんだい?」
二人の前にまな板を置いて、洗った野菜を並べていく。そして一通りの野菜をどんなふうに切るのか見本を見せる。
「まず、この玉ねぎだ。これは皮を剥いて半分に切ってこう四角になるように切ってくれ。この赤と黄色のパプリカは半分に切って種をとってこれも四角になるように……。」
野菜を切っている最中に、俺はドーナに問いかける。
「ドーナは包丁は使えるか?」
「あぁ人並みにはね。」
「扱ったことがあるなら、まぁ安心だな。でも念のため、分からなかったらすぐに聞いてくれよ?」
「ありがとう、わかったよ。」
「それじゃあ二人とも怪我しないように頼んだぞ?」
そして二人に野菜の仕込みを任せて、俺はシアのもとへと向かう。
「おっ、早いなシア。」
「えへへぇ~頑張った♪」
シアはもう米を研ぎ終え炊飯器にセットしていた。シアはめちゃめちゃお手伝い上手だ。
ぽんぽんとシアの頭を撫でてから、調味料の計量を始めた。
「よし、それじゃあ調味料を計っていこうか。」
「うん!!」
「これが醤油、砂糖、塩、味醂、酢だ。」
「うん!!」
「そしたらこれを1個ずつ計っていこう。まずは醤油を計ってみてくれ。」
「うん!!んしょっ……。」
計りの上に置かれたボウルにトクトクと醤油が注がれていく。
「お兄さんこれでいい?」
「あぁ、ぴったりだな。それじゃあ次は砂糖だ。」
「うん!!頑張る!!」
そして、シアは順調に全ての調味料をはかり終えた。余談だが、全て一発で分量ジャストをシアは計っていた。
このことは念のため二人には……。
「シアちゃん凄いっす!!全部ピッタリで計っ……むぐっ!?」
「ちょっとグレイス静かになぁ~?」
「むぐ~!!」
余計なことを口走りそうなグレイスの口を押さえて拘束した。そしてグレイスの耳元で小声でささやいた。
「いいか?この事は二人には内密にな?理由はわかるな?」
コクコクとグレイスはうなずいた。よし、これで大丈夫だろう。
「さて、それじゃあ次は俺が魚を切るからちょっと待っててな?」
「うん!!わかったぁ。」
ソードフィッシュをバックから一匹取り出し三枚におろした。そして、適度な大きさの切り身にしていく。
切り終わったら塩、胡椒で下味をつけて片栗粉をまぶす。
「それじゃあシア、これを一緒に揚げよう。」
「揚げ…る?」
「この機械の中に高温の油が入っているんだ。この中にこの切り身をこんな感じで入れてほしい。」
「ちょっと怖いけど頑張る!!」
「大丈夫だ。怖がらずにゆっくり入れるんだ。後は静かに摘まんでいる指を離せば熱くない。」
「うん、そーっと……そーっと。」
恐る恐る油の中に魚をいれるシア。
ゆっくり焦らずに……そう、それでいい。
「できたじゃないか。凄いぞシア。」
「やった、できたぁ!!」
頑張ったシアの頭を撫でてあげた。
頑張って良くできたら褒めるのが普通だ。全く褒めずに罵声を浴びせかける人もいるが……俺は褒めて褒めて伸ばしてあげたい。
そしてソードフィッシュを揚げていると、ランに声をかけられた。
「ヒイラギ~野菜切り終わったわよ~。」
うん、ナイスタイミングだ。それじゃあ仕上げに取り掛かろう。
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