ギルドへ
ハウスキットを出発し、森を抜けて関所でシアとランの分の銀貨を払い街へ入った。そしてまっすぐギルドへ向かう。
「何もないといいんだが。」
ギルドに向かう途中でぽつりとつぶやく、なんせミースにドーナとの一部始終を見られているため、噂が立っている可能性がある。
内心少し不安になりながら歩いていると、あっという間にギルドに着いた。しかしギルドに着くと、そこにあるはずの扉がなかった。
「あ、またやっちまったねぇ。夢中で飛び出しちまったから、ぶち破ってたみたいだ。」
どうやら犯人はここにいたらしい。ドーナが思い出したようにつぶやいている。言動からして、戦っていた現場に駆け付ける時に蹴破ってしまったのだろう。
苦笑いする彼女とともにギルドの中に入ると……。
「お待ちしてましたよヒイラギさん、ドーナさん♪」
「げ、ミース。」
まるで俺たちを待ち構えていたように、ギルドの中でミースがにこやかに微笑みながら待っていた。そしてドーナに近づくと、彼女の耳元で囁くように言う。
「うふふっ、ドーナさん?ギルドのお仕事の事が気になって仕方ないんですよねっ?」
「うっ、なんでそれを……。」
「そんなドーナさんに朗報で~す!!ただいまより私、ミースがこのギルドの取締役に就任しました~♪」
思わぬミースの言葉に混乱するドーナ。
「なっ、なにがどうなってんだい!?」
「ですから~、ヒイラギさんと楽しんでくださいねってことですよ!!と、いうわけでドーナさんはもうお仕事気にしなくていいですからね?」
彼女なりの優しさなんだろうか?急に言われたせいでドーナはひどく混乱しているが……まぁ、せっかくミースが彼女の気持ちを汲み取って行動したのだ。それを無碍にすることはないだろう。
新たにギルドの取締役になったらしいミースに、俺は一つお願いをすることにした。
「あー、それじゃあドーナに最後の仕事を任せたいんだが……。」
「なるほど、記憶に残るような最後の仕事ですね!?」
「いや……そういうことじゃなくてだな。」
「いえいえ、わかりますよ。出会った場所は記憶に残しておきたいですもんね。それではどうぞごゆっくり~!!」
あぁ……凄い勢いで勘違いをされている。とはいえ何とかうまいこと進んだし……この後の処理はドーナに任せよう。
「ど、ドーナ?混乱している所悪いんだが、二人のステータスカードを作ってくれないか?」
「あ、あぁ!!わかったよ。」
やっと正気に戻ったらしいドーナは、シアとランを連れて2階へ歩いていった。そして待つこと5分ほどで三人とも戻ってきた。
ちなみに待っている間、俺はミースを含むたくさんの受付嬢たちに質問攻めにされていた。
「待たせたねヒイラギ、ラン達のステータスカードはちゃんと作ってきたよ。」
シアとランは各々自分のカードを持っている。
そしてドーナはチラリとミースに視線を向けた。
「まったく、人がいない間に勝手にいろいろやってくれたねぇ。」
「ふふっ、でもドーナさんとっても嬉しそうな顔してますよ?」
「う、うるさいよ……。」
そうぼやくドーナをミースがからかう。確かにミースの言う通り、今のドーナの表情はとてもうれしそうだ。
さてさて、シア達のステータスカードも作れたし今日のところは退散しようかな。ミース達に見送られ俺たちはギルドを後にする。
その帰り道……。
「少し買い物をして帰りたいんだが、いいか?」
「何か買うのかしら?」
「人数分の布団と毛布を買わないと。」
「あら、そんな細かいこと気にしてたの?ワタシ最初から一緒に寝るつもりだったけど?」
「はへ?」
「アタイもヒ、ヒイラギと一緒でいい……けど。」
「いや、ダメだ買おう。」
二人の意思を尊重したい気持ちはやまやまだが、それはそれでいろいろと問題が……な。
いざ寝具を扱っているお店へと入ろうとすると、急に二人に両腕をがっちりとホールドされてしまう。
「ダメよ?ワタシ、ヒイラギと一緒じゃなきゃ嫌だもの。」
「そ、そうだぞ。」
「シアもお兄さんと一緒がい~い!!」
「え、あ……あぁ……。」
いくら手を伸ばそうとしても、二人にホールドされた腕は全く動かせない。そのままずるずると引きずられ、関所を通り森への道を強制的に引き返す羽目になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます