言葉の壁を壊して…


 まぁいろんなことがあったが……現在みんなで一つのテーブルを囲み、お互いの自己紹介をすることになっていた。


「じゃあラン?自己紹介お願いしてもいいか?」


「えぇ、もちろん!!ワタシはのランよ、好きなものはヒイラギ。よろしくね?」


 ポッと顔を赤らめながらランは言った。


 恥ずかしがるぐらいだったら最後のやついらなかったと思うんだが……。ドーナといいランといい少しこういうところは似ている。


 そして簡潔なランの自己紹介が終わると、シアがすぐさま手を上げた。


「ランお姉さん!!私シアっ!!」


「シアちゃんって言うのねよろしく。」


「アタイはドーナ……ってランも獣人族の言葉わかるのかい?」


「当たり前じゃない?ワタシみたいな上位のドラゴンはみ〜んな言語理解のスキルを持ってるわよ?」


 エッヘンと勝ち誇るようにランは胸を張って言った。


「わからないのは、アタイだけか……。」


 少し寂しそうにドーナはポツリと言った。


 ランの話なら上位のドラゴンは言語理解のスキル持ってるんだよな。ってことはもしかするとアレに……。


「なぁ、ドーナ。言語理解のスキル欲しいか?」


「当たり前じゃないかい、アタイだってシアと話したいよ。」


「そうか、実は一つ……望みがある。」


「ど、どうやるんだいッ!?」


 かなり食い気味に詰め寄ってきたドーナに、俺はマジックバッグからレッドドラゴンの宝玉を取り出して見せた。


「これを食べるんだ。」


「えっ!?これを……かい?」


「あら、それってあれよね?さっき転んだ……こほん、拾った宝石じゃない。」


 そう、これはさっきランが躓いた……もとい俺のスキルによって生成されたあのドラゴンの宝玉だ。


「これは俺のスキルで生成された、あのドラゴンの全てをつめこんだモノだ。これを食べれば、ドーナはあのドラゴンのステータス、スキルを全て自分のものにすることができる。」


「そ、そんなスキル聞いたこと無い……。そ、それより、これ貴重な物なんだろ?アタイが食べてもいいのかい?」


「シアだってドーナと話したがっているんだ、それに俺はこれを君に食べてもらいたい。さんざん良くしてくれたお礼も兼ねて……な。」


「ほ、本当にいいのかい?」


「あぁ。」


「そ、それじゃあ……いただきます。」


 恐る恐るドーナはレッドドラゴンの宝玉を口にした。そして、すべて食べ終わると彼女は自分のステータスを開き、目を見開いて固まった。


「な、なんだいこれ……軒並みステータスがとんでもなく上がってる。」


 もちろんステータスも上がっているだろうが、今回の目的は別にある。さっそく彼女に試してもらおう。


「驚いているところ悪いんだが、シアに話しかけて見てくれないか?」


「あ、あぁ。シア?アタイの言葉わかるかい?」


「うんっ!!ドーナお姉さんとお話できる!!」


「どうやらちゃんと聞こえているらしいな。」


「あぁっ、これでようやく話せる!!」


 これでひとまず身内のわだかまりは解消されたな。二人が楽しそうに話している様子に満足していると、ランが話しかけてきた。


「ヒイラギ、あなたのそのスキルあまり言いふらさない方がいいわよ?」


「あぁ、わかってる。」


「そう、ならいいんだけど。」


 ランは頭がよく回るようで、このスキルが孕んでいる危険性にいち早く気付き心配してくれたようだ。


「さてっと、自己紹介も終わったところだし。そろそろティータイムにしようか?」


 時間もちょうどいい時間だしな、それにちょっと落ち着いていろいろ話したいこともある。

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