腹ペコ少女シア
森を出てから十分程歩きようやく街に着いた。関所を抜けて真っ先に向かったのは、ギルドではなく宿屋だ。
「あっ、おかえりなさいませ~。」
宿屋の中へと入ると受付の人が出迎えてくれた。
「201の鍵をくれないか?」
「はいっ、えっと201、201……こちらですね。」
「ありがとう。あと温かいお湯をもらいたいんだが。」
「わかりました。では後程お部屋にお持ちしますね。」
出発前に預けていた鍵を受けとり、俺は足早に部屋へと向かう。中に入り内側から鍵を閉めて、バッグの中に入っていたシアに一声かける。
「シア、もう大丈夫だ。」
そう声をかけると、ぴょんとシアがマジックバックから飛び出してきた。するとしかめっ面になりながら舌をペロッと出して言う。
「ヒイラギお兄さ~ん、あの黒い実美味しくにゃい~。」
「オーリオの実を食べたのか?」
「うん、美味しくなかったの。」
シア曰くどうやらオーリオの実は美味しいものではないらしい。後で何か工夫を加えないといけないみたいだ。
「また食べちゃダメだぞ?」
「うん!!もう食べないっ。」
オーリオの実の活用方法は後から考えるとして、今はこれからどうするかを考えないといけない。宿屋の食事は一人分しか提供されないから、シアの分の食事の確保が必要だ。
あとは新しい服も必要だな。今のシアの服はとてもじゃないが服と呼べる代物ではない。ただのぼろぼろの布きれを体に巻き付けているだけだ。
さらに言えばこのことをドーナとも共有しておきたい。さすがに一人ぐらい協力者が欲しい。彼女ならばシアのことを話してもきっと大丈夫なはずだ。
「よし、やることは決まった。」
やることを頭の中で整理しながら、お湯が運ばれてくるのを待っていると、部屋の中にきゅるる~というかわいらしい音が響いた。
「あうっ!!」
シアは自分のおなかを押さえて、顔をゆでだこのように真っ赤に染めていた。どうやらおなかが空きすぎて悲鳴を上げてしまったらしいな。
「お腹がすいているのか?」
そう問いかけるとシアはコクリと頷いた。
食べ物……食べ物か、バッグの中には三日月草と、美味しくないオーリオの実しか……。
「いや、あったな。これが。」
バッグの中から俺は宝玉を二つ取り出した。ゴブリンのほうは小さくて腹の足しにはならないだろうが、こっちの赤い宝玉は結構大きいから十分腹にたまってくれるだろう。
今俺が食べたところで意味がないものだからな。これはシアにあげよう。
「シア、これ食べるか?」
シアの前に二つの宝玉を差し出すと、シアは目をキラキラと輝かせ二つの宝玉を見つめる。
「いいのっ?」
「あぁ、遠慮せず食べるといい。あと、これからはおなかが空いたら遠慮せずに言うんだぞ?」
「お兄さんありがとっ!!」
お礼を言ってシアは宝玉にかぶりつく。ゴブリンのほうは一口で食べ終えてしまったが、赤い宝玉のほうはやはり大きいから早々に無くなる気配はない。
「あみゃあぁぁい~、おいひぃ~♪」
どうやら宝玉は甘く美味しいらしい。シアは喜びながら無我夢中でそれを食べ進めた。そしてあっという間に宝玉を食べ終わると、満足そうな表情を浮かべている。
「ヒイラギお兄さん、美味しかった!!」
「そっか、おなか一杯になったか?」
「うん!!ごちそうさまでした!!」
えへへ~と満足そうな表情を浮かべるシアを撫でると同時に、俺は興味本位でシアのステータスを確認することにした。
俺は宝玉を食べるとステータスが上がったり、スキルを手に入れたりできるが、シアはどうなのだろうか?
「鑑定っと。」
そう唱えた俺の前にシアのステータス画面が表示された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます