第71話 「へ、平気だもん!」
結が再び布団まんじゅうになった時、部屋のチャイムが鳴った。
しかも俺の部屋ではなく結の部屋のチャイムが。誰だ?
「だ、誰ですかね?」
「ちょっと見てくる」
そう告げてモニターを見ると、そこには柚の姿があった。
「来たのは柚だな。修学旅行から帰ってきたからその話でも聞きにきたんじゃないのか?」
「……」
「結?」
「……あ、いえ、なんでもないです。カギ開けてください」
「あいよ」
言われた通りにカギを開けてドアを開けたその瞬間━━
「ちょっと結! 話があるわっ! ……って晃太!? なんであんたがこっちの部屋にいるのよ!?」
「いや、なんでって……」
付き合い始めたのを今言うべきかどうか悩んでいると、後ろから結の声がした。
「おねえちゃんに何しに来たの?」
「結……。ちょっと話があってきたのよ。いつまでも布団入ってないで起きなさい。てか、珍しいわね? こんな時間まで寝てるなんて」
「別にたまにはいいじゃん。今起きるから中入って待ってて」
あれぇ? 結、なんか機嫌悪い? いつもこの二人は仲良い感じだったんだけど……。
そんな事を思っていると、結が布団まんじゅうから出てきた……ってあぁっ!!
結の格好の事忘れてたぁぁぁぁ!!
「ちょ……ちょっとぉぉ! 何よその格好はぁぁぁ!! え? 何!? あんた達まさか!」
「え? あぁこれ? 可愛いでしょ? それに昨日は晃太さんと一緒に寝たの。腕枕もしてもらったのよ?」
「こ、こここここ晃太ぁ!?」
「してないしてない! まだ何もしてないぞ!? 確かに一緒の布団では寝たけども……」
「まだって!?」
「いっぱいキスもしましたもんね? ね? 晃太さん?」
「え、いや、ちょ待って……。もう!? 嘘でしょ!?」
おぉい! お前は何を言ってんの!? 自分の姉の前だぞ!? ほら見ろ! 柚も見たことないくらいに戸惑ってるじゃねーか!
「あ、あのさ? キ、キスって……もしかしてあんた達……」
「そうだよ? 昨日から私と晃太さんは恋人同士なの」
「はぁぁぁぁぁぁっ!?」
柚は大声をだして驚き、結はそんな事を言いながら俺の腕に絡まってくる。あ……柔らかい……じゃなくって!
「お、おい! 早く着替えろって!」
「はい。わかりました晃太さん♪ よいしょっと……」
俺がそう言うと、いきなり目の前でネグリジェを脱いで下着だけになりやがった。
しかも勢いよく脱いだおかげで、その大きな物がプルンと揺れる。えぇぇぇ……。
「待て待て待て! せめて俺が隣に行ってから着替えろよぉ!」
「べ、別に晃太さんなら彼氏だから見られてもいいもん。へ、平気だもん!」
結はそんな事を言いながらタンスからニットワンピースを出して上から被り、あっという間に着替えてしまった。
いや、絶対平気じゃなかっただろ。顔、耳まで真っ赤じゃねーか。一体何がそうさせたんだ!?
そこではっとして視線を動かすと、柚は口をポカーンと開けてそんな俺達を眺めていた。
まぁ……そうなるよなぁ……。
「で、話ってなに? おねえちゃん」
結が再び俺の隣に立ち、腕に抱きついて柚にそう聞いた時だった。
「先生、まだ?」
玄関の外から声が聞こえた。え? この声は確か……。
「え、あ、あぁ、秋沢さん。いいわよ。今開けるから入ってきて」
「は? 秋沢が来てるのか!?」
「おねえちゃん、どういう事? なんで秋沢さんがここにいるの? 秘密じゃなかったの?」
「秋沢さんはね、晃太のお見舞いに来ようとして学校で住所聞いたらしいのよ。結局ドアの前まで来て辞めたみたいだけど……。晃太はそれ聞いてるのよね?」
「あ、あぁ……」
「……晃太さん?」
結が俺をジロリと睨む。
「いや、ちゃんと言おうと思ってたぞ? だけど昨日はそんな場合じゃなかっただろ?」
「き、昨日は確かに……あぅ……」
あ、昨夜の事思い出してる。よし、これで話は逸れた。
「だけどなんで今お前と一緒に来てんだ?」
「それは今から話すわよ」
柚は言いながらドアを開けると、秋沢が入ってきた。
「やっほ」
いや、やっほじゃねーよ。
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