シカゴの夜

 どうも作家ベン・ヘクトのことを理解できないと“Miracle of the Fifteen Murders”の評価はできないらしい。

 そう思って、ベン・ヘクトの作品を探しました。確かあそこにと思って引っ張り出した『ミニ・ミステリ傑作選』(エラリー・クイーン編/中村保夫・吉田誠一・永井淳・深町眞理子訳/創元推理文庫)にありました。

 タイトルは「シカゴの夜」。『ミニ・ミステリ傑作選』は本当に短い作品ばかりなのですが、「シカゴの夜」も文庫にしてわずか5ページ。短い。と思いきや、この作品集ではけっして短いほうに属さないのが、このアンソロジーの恐ろしいところ。

 問題の「シカゴの夜」ですが、これも評価が難しい話だと感じました。あらすじはというと、新聞記者らしき人物が「変わった事件の体験談を聞かせてくれ」と刑事にせがむというもの。

 刑事はいくつかの事件を語るのですが、この構造は“Miracle of the Fifteen Murders”に似ています。“Miracle of the Fifteen Murders”では複数の医者が経験した医療事故や過失を語るのに対し、「シカゴの夜」では刑事が奇妙な事件を語ります。刑事自らが経験した話だけではなさそうなので、登場人物を増やせば“Miracle of the Fifteen Murders”のようにできますし、反対に一人の医師が医者仲間に起きた事故の話をする形にすれば「シカゴの夜」のようにできます。

 おそらく「シカゴの夜」は枚数的な制約で登場人物を少なくしたのでしょう。

 いくつかの変わった事件や事故を並列的に語るという形式がベン・ヘクトという人はやたらに好きな印象も受けますが、二作品だけで判断するのはあまりに軽率というもの。

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