赤い部屋

 そもそも、この話、乱歩は好きなのだろうか。

好みだからアンソロジーに選んだのか、歴史的価値を重んじて採ったのか。

気持ちの悪いところのある物語なので、乱歩が好きということも考えられますが、どうも違う気もする。

 悩んでいると乱歩のある短編の名前が浮かんできました。それは「赤い部屋」。初期の短編ですが、知名度はいまひとつというところでしょうか。雑誌「新青年」の登龍門とでもいうのでしょうか。六作連続短編掲載の一つとして書かれた作品。肝は「プロパビリティーの犯罪」の連打で、どうも谷崎のある作品を意識して書かれたようです。

 ポイントは語り口の類似です。ベン・ヘクトの“Miracle of the Fifteen Murders”は医師たちが自らが犯した医療ミスによる死を次々と告白するわけですが、「赤い部屋」は異常な興奮を鎮めるために犯罪に手を染めた人々が自らの完全犯罪を告白するという形を取ります。

 百物語形式とでもいうのでしょうか。その場に集まった人々がエピソードを語るという形式はベン・ヘクトの独創でも乱歩の発明でもなく、ある種の型です。

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