トリック発明家としてのチェスタトン

 古典を読み直す意味を考えながら、世界傑作短編集について考えております。この連載をきっかけに古い海外作品を手にとってくださるかたが出てくれば嬉しいのですが、心配なこともあります。

 やはり、古典は古いのです。古びない部分を見つけ出してミステリーの本質を味わってください、というスタンスは変わらないのですが、最近は「古びた部分」を見つけて、ミステリーの見せ方の洗練さを感じ取ってもらいたいとも思います。

 チェスタトンは「逆説」という二文字がついて回りますが、基本的なトリックを開発した発明家としての側面もあります。近年のミステリーだけでお腹いっぱいというかたも、チェスタトンを読むことで「あのトリックの源流はこれか」となることもあるかと。

「当時はこんなシンプルな形で読者を驚かせられたのだな」となるかもしれません。トリックの見せ方の進化を知ることは、特に自分でもミステリーを書くというかたには、大切な学びになるはずです。少なくとも、なんらかの気付きはあるかと。

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