奇妙なジレンマ

 さまざまな作家が並べられたアンソロジーに置かれた「奇妙な足音」には、チェスタトンの短編集のなかの一つとして、「奇妙な足音」を読むのとはまた違う肌触りがある、と前回、書きました。

 ブラウン神父シリーズを楽しむのに一つ厄介なのは、順番に読んだほうがよい仕掛けがあることです。特に最初の三作品、「青い十字架」「秘密の庭」「奇妙な足音」は順番に読んでもらいたいのです。

 このアンソロジーをオススメすると、「奇妙な足音」が初めてのブラウン神父との出会いになるかたも出てくるはず。アンソロジーの良さの一つには、知らない作家に出会い、一つの作品からその作家の他の作品に興味の枝が伸びていくことがあります。

 ネタばらしをしないように、なぜ先ほど挙げた三作品を順番通りに読んだほうがよいか詳しく書けないのですが、順番通りに読まなければつまらないということはありません、とだけはお伝えしないといけないと思うのです。

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